中国軍の能力向上により、その先制奇襲攻撃の甘受は困難になった(ペロシ氏訪台を受け台湾周辺で演習する中国軍、2022年8月、写真:ロイター/アフロ) (文:小木洋人) バイデン米政権の国家防衛戦略における日米同盟重視には、インド太平洋地域での米軍の優位が低下することへの危機感が映されている。大規模艦隊などによる海空優勢を戦略の軸にしてきた米国に対し、ミサイルや電子戦を含む非対称的手法でA2/AD能力を構築してきた中国。そのバランスが中国優位へと傾く中で、米軍は作戦構想をどのように変化させてきたのか。 本年10月27日、バイデン米政権は、国防省から国家防衛戦略(NDS)を発表した。2018年にトランプ政権がNDSを発表して以来約5年振り、バイデン政権としては初めてとなる。10月12日に発表された国家安全保障戦略(NSS)を支え、国防省の優先任務や戦略環境等を記載する文書である。 新たなNDSは