中国の湖南省南部に伝わる「女文字」(女書)についての意義深い集いに、先日うかがった。その地では、以前、若い娘たちが義理の姉妹となる約束をして、彼女たちの間で通じる独特の表音文字を用いていた。中国語の方言を記し、生活上の苦しみ、別れの辛さなどを女性同士で伝え合ったものだ。漢字に由来するものもあるが、刺繍に適したような菱形の個性的な文字であり、70年以上前に祖母(清朝末期の生まれであろう)から指でその文字を教わり、木の棒で地面に書いて覚えた、という事実上最後の伝承者の女性の肉筆を拝見した。そこに込められた思いの一端に触れられたような気がした。 だいぶ環境は異なるが日本でも、女子には友達と数人のグループを形成する傾向がうかがえる。そこでは独特な文字・表記が発達しがちである。「へ」に「〃」を貫く平仮名は、第54回に触れたように、すでに戦前から女学校で書かれていたそうだ。 二人で一つ、というほど仲良