昨年暮れ、JR東日本の首都圏の駅に那須町の観光ポスターが張り出された。町観光協会が制作したポスターを同社が自社の業務用として扱ったため、掲示は無料だった。町にとっては異例のことだった▼昨年3月11日の東日本大震災発生直後、同町に上下2本の東北新幹線が緊急停止した。夕方、JRから町に乗客の一時受け入れ要請があった。町は当初、体育施設への避難を考えたが、雪が舞う寒さなのに暖房設備がない▼高久勝町長の判断で町内の観光ホテルに打診したところ、七つのホテルが受け入れを了承した。町はバスを手配し、誘導のため消防団が待機した▼午後10時ごろ、JRから正式の要請があり、消防団の投光器が新幹線高架を照らす中、707人が作業用通路を降りた。全員が退避したのは午前1時ごろだった▼ホテルがある地区は停電を免れていた。乗客は暗闇と寒さから解放され、町やホテルが用意した食事をとった。後日、JRはホテル側に費用を請求す