ユダヤ人大虐殺の証人ヤン・カルスキ [著]ヤニック・エネル/ホロコーストを知らなかったという嘘 [著]フランク・バヨール、ディータァ・ポール[評者]保阪正康(ノンフィクション作家)[掲載]2011年6月5日著者:ヤニック・エネル 出版社:河出書房新社 価格:¥ 2,310 ■20世紀最大の病 深化した視点で 第二次大戦前後の史実解釈は着実に「同時代史」から「歴史」へと移行している。記憶や記録の時代から教訓(本質)をいかに汲(く)みとるかに重点が移っているということだ。 ナチスによるユダヤ人大量虐殺という、20世紀最大の人類の病もその例に漏れるわけではない。特にヨーロッパ各国では、このホロコーストについて次世代により、同時代の視点とは異なる深化した論点が示されているのだが、この両書もその系譜に連なっている。 『ユダヤ人』の著者は1967年生まれのフランス人作家、『ホロコースト』は61年生ま