冬虫夏草類は、昆虫に特異的に感染して死亡させ、そこからきのこを発生させる菌類です。この仲間の菌の感染は、昆虫の数を左右する要因の一つと考えられていますが、その生態や天敵としての働きに関する知見は、ブナアオシャチホコとサナギタケの例など一部の種に限られていました。 そんな中、2016年にセミの幼虫に感染するツクツクボウシタケが大量に発生しているのを岩手県盛岡市の近郊にて発見しました。発生場所は17m×23mの広さのトネリコの林です。土を掘り返すと、それらはツクツクボウシの終齢幼虫から発生していました。2016年、2017年、2020年のそれぞれ8月上旬に調べたところ、このきのこは1m2あたり幼虫8.9頭(林分全体で推定約3450頭)、4.6頭(同1780頭)、1.4頭(560頭)から発生していました。そして、どの年も、感染を免れて地上に這い出してきたツクツクボウシの幼虫は林全体で2~6頭とご