子供向けの「偉人伝」の代表格の一人、「野口英世」を取りあげてみます。野口英世といえば、世界的な偉大なる細菌学者であり、日本銀行券「千円札」の肖像として、日本人の誰もが知る人物ですが、わたしたちのなかではその実像ではなく、子供時代に読んだ「偉人伝」の中のイメージのままありつづけているのではないでしょうか。 「てんぼう、てんぼう。てんぼうの清作やあい。 清作はみにくい左手を見られるのがはずかしくて、たもとやかばんのうしろにかくしておりました。だが、あまりからかわれると、がまんできなくなって、とびかかっていくことがありました。しかし清作はからだが小さいし、力もあまりありませんから、いつもまけてしまいます。そして、ひとりぼっちになって、みんながはやしたてる声を、くやしそうにきいているのでした。……『ああ、この手さえじゆうになったらなあ…』とつぶやきながら、人のいないとことに行って、わっとなきだすの