『北京の秋』 ボリス・ヴィアン ☆☆☆☆ 再読。まあしかし、リアリズムなんてものはかけらもない、シャボン玉のように軽くてナンセンスな小説である。遊び以外の何物でもない。ヴィアンの小説を読んでいると、この人は普通の作家とはまったく異なる感性で書いてるなとしみじみ感じる。ただふざけているだけのように思えることもある。こんなんでいいのかと呆れそうになるが、しかし、にもかかわらずこの妙に人をひきつける、キラキラした不思議な魅力は一体何なのか。 ヴィアンの魅力を列挙してみると、まずは「砂漠に鉄道を作る」というヴィジョンがとても美しい。安部公房がルイス・キャロルとカフカの結婚と絶賛している通りである。このシュールレアリスティックで詩的でしかもナンセンスなヴィジョンの美しさこそがヴィアンの身上であって、名作『うたかたの日々』の「肺の中に睡蓮の花が咲く奇病にかかって死んでいく少女」なんてのはきわめつけ
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