「祭りおじさ~ん!」 両の拳を夜空に突き立ててガニ股で叫ぶひょっとこのお面をつけたこのおじさん、只今ご本人からもお名乗り頂きました通り、祭りおじさんであーる。自称も通称もまるっと祭りおじさん。地元の人以外は日本中誰も名前も知らないだろう小さなお山の足下に位置するこの小さな町で、実際のところはすこぶるささやかにそれでいて町民感覚では随分おおげさに催されるこの祭りの日、その日に限って言えば祭りおじさんは自他共に認める完全無欠の祭りおじさんなのだ。スラックスのズボンにカッターシャツの上から水色のはっぴを着込み真っ赤な「祭」の文字を背負い、トレードマークであるひょっとこのお面の向こう側からくぐもった声で、祭りおじさんは行き交う人々におどけて見せる。 「祭りおじさ~ん!」 大鳥居へと続くその通りは左右に出店が並んでいて、だからみんな何かしらを食べながら飲みながら歩いてる。だから祭りおじさんに道を阻ま