「忍一時風平浪静、退一歩海闊天空(一時の我慢で波は静まり、一歩退けば空がひらける)」 今思えば、赤面するほど力んでいたあのころ。物事は白黒つけなければ気が済まず、思い込み激しく一直線で、はた迷惑で退屈なひとりよがりだった。弱いくせにいきがって、眼鏡を壊されては、しゃがんで歯を食いしばっていた、梁家輝(レオン・カーファイ)のように。 「監獄風雲(プリズン・オン・ファイアー)」(87)の衝撃は、今も忘れがたい。閉ざされた刑務所。丸裸で囚人服を着せられ、サバンナに放り出されたら、どう生き延びればいいか。正論など通じない、強者が力で支配する世界。白でも黒でもない灰色の道を、自尊心を失わずに歩くには? 独房のプラスチックの椅子の裏に、周潤發(チョウ・ユンファ)が書いた言葉──忍一時風平浪静、退一歩海闊天空。それが、林嶺東(リンゴ・ラム)との出会いだった。 「龍虎風雲(友は風の彼方に)」(86)、「学
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