【第4回】短編小説の集い 参加作品 まだ日曜と平日の境界はなく、夜のしじまがゆっくりとまるで羽毛のように寝室へ舞い降りたころ、野山の獣は牙を隠してしまい、そして小鳥たちの羽ばたきが微かなものへ変わる外の気配に耳を傾けながら、さきほどまでのテレビの光景によって焼きつけられた念いが何かしら切ないまま、母におぶられたわたしは、ほおずりしたくなるウサギとリスの絵柄の掛け布団にゆっくり滑りこむと、枕もとの絵本を手にしたのも束の間、まばたきが物憂いことを覚えた。 犬のシシリーは今は亡き城主の娘マリアーヌの言いつけをよく守り、勢いよく草むらに飛びこんで、ちいさな野ウサギをくわえて戻ってきた。 マリアーヌは冷ややかな目つきで見据えると、すばやく獲物をかすめとり、木陰から木陰へ渡り歩くようにしてその華奢な背中を遠のかせた。 茫然とした面持ちのシシリーは取り残された侘びしさより、陰惨な手によって弄ばれる野ウサ
【第3回】短編小説の集い 参加作品 「今日はえらい人出やな、クリスマスやからかの~、おやっ、べっぴんさんもぎょうさんおるわ」 じいさん、いつものようにパチンコ帰りかと思いきや、 「年金生活のわしらにケーキなんぞいらんわい。ばあさん、みょうなとこだけ気前ようて困ったもんじゃ。はよ帰って三個で二百円のラーメン一個くって寝よう」 と、ぶつくさ言いながら寒空に身をちじませ、とぼとぼ歩いておった。 「なんや、あれ、派手な屋台やなあ」 近づいてみれば、ソフトラーメンとの看板、しかしだれもおらんかった。 「これはキャンペーンちゅうやつかも知れんな。おっ、書いてある書いてある」 「らっしゃい!新発売でっせ。どうです、だんなさん」 「なんや、店員おるやないか」 「ケーキは一番やすいのでかまへんわ、腹へったし食べてこうか」 「へい、お待ち!」 「また早いでんな。れれっ、なんやこれ、ただのソフトクリームやないか
さむさむぴゅーぴゅーそとは木枯らし、うとうとスヤスヤおねむがたりないのかな、とろとろぬくぬくハイハイはってあちこちどちらへ、きゅっとまるまり又らいねん。 いえいえ、まだもうすこしよ、ちび六、冬眠するまえにおもいでぴかぴか、きぶんツヤツヤ、そしてみなさんにごあいさつね。 「だれよ、まだお昼まえじゃない、まったくもう休みの日くらいふて寝させてよね」 おやおや、おねえさんふきげんですね。でも今にはじまったことじゃないですから、あっ、ないしょないしょ。 「わたしよ、寒いんだから早くドアあけてくれない。お客さん連れているの、聞こえてる」 「聞こえてるわよ、なにさ、電話くらいしてちょうだいよ」 「電話したけど、出ないからわざわざ来たのよ、どうせ留守番なんでしょう。待たせたら失礼じゃない」 「えっ、なにそれ、あんたひとりじゃないの、ちょっと待って」 「何回も電話したの、文句いうひまあったら素早くしてよ。
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