著名作家らの個人全集が出にくい時代を迎えている。箱を付けるなど高額・豪華な造本で、名を成した作家や学者が著述活動を締めくくる記念碑的書籍のイメージがあったが、長期にわたる出版不況下で、刊行数は激減。一方で電子書籍化など、新たな形態も模索されているようだ。(磨井慎吾) ◇ ◆娘の「ぼやき」に発奮 人文書系出版社の晶文社は4月、昨年3月に87歳で亡くなった詩人で思想家の吉本隆明さんの全集を刊行すると発表した。全40巻で、第1回配本は来年3月を予定している。同社によると、発刊決断のきっかけは吉本さんの次女で作家のよしもとばななさんが昨年末に自分のサイトに書き込んだ“ぼやき”だった。 「父の晩年には放っておいても全集くらいは出るだろうと思っていた。やりたいという編集者はいたし、目次まで編んでいた。でも予算がどこにもないって言うわけだ。どの会社にもないと」 同社の
電子書籍と紙書籍の価格比較サービス「電子書籍サーチ」などを運営するフリープログラマーのfujinyoさんは5月28日、電子書籍の献本を支援するサービス「KENPON」を、電子書籍サーチ内でスタートした。 指定したメールアドレス最大30件に、10MバイトまでのPDFファイルを送付できるサービス。ブログに電子書籍を取り上げてもらうため、作家がブロガーに献本するという使い方を想定。自費出版の電子書籍プロモーションの“助け舟”として使ってほしいとしている。 TwitterかFacebookアカウントで認証した上で、著者名、メールアドレス、献本コメント、献本先メールアドレスなどを入力、献本したい電子書籍のPDFファイルをアップロードすると、指定したアドレスあてにファイルを送信できる。 fujinyoさんは、「Kindleダイレクトパブリッシングによってセルフ出版が盛り上がっているが、ただ書いてストア
本も好き、だけどネットも好き、テクノロジーも大好き――そんな人間にとって、ここ数年の「電子書籍(または電子出版。以下この二つを便宜的に同じものとして扱う)」をめぐる議論は、フラストレーションのたまるものばかりだった。 いわく、「本が売れなくなる」「パブリッシャーがつぶれる」「海外企業に支配される」「海賊版が増える」「本離れが進む」……こんな極端な悲観論が目に付く一方で、出版だけでなく、既存メディア全体がいますぐ用済みになり、ネットやソーシャルがとってかわる、といったような根拠薄弱な楽観論(?)も目立った。中には具体的な年をあげて、新聞等の「消滅」を予言したタイトルの本もあったがあれはどうなったのか? つい最近も、同工異曲の本が出版されている。 「(本の)電子化」ではなく、「(ウェブの)書籍化」 新しい事象に直面したとき、狼狽した人々は大雑把でわかりやすい「物語」にすがりたがる。「◯◯はすべ
版元といえば、いまでは出版社を指す。しかし江戸時代は「出版」「印刷」「販売」をすべて統括する存在だった。中でも大手だったのは「須原屋」。印刷博物館(東京都文京区)で開かれている企画展「印刷都市東京と近代日本」で、その足跡をたどってみた。 「当時の版元は本の総合プロデューサーでした」。同館の川井昌太郎(しょうたろう)学芸員はそう解説する。作者から原稿をとってきて筆耕に清書をさせ、彫り師に製版を、摺(す)り師に印刷を発注し、製本して完成。自ら書店も開き、そこで販売もしていた。 川井氏によると、江戸の観光ガイド『江戸買物独案内』には62の版元を含む160の出版・印刷関連業者の名がある。『江戸名所図会』(1834年)にも、版元の店先が客でにぎわう様子が描かれたという。 『江戸の本屋さん』(故今田洋三氏著)によると、須原屋は江戸後期には12軒に上った。本家の須原屋茂兵衛(もへえ)は9代続き、幕府から
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