『経典釈文』は南朝の経学(『老子』『荘子』を含む)を知る上で不可欠の文献であり、その意義は今さら言うまでもありません。 『経典釈文』の流布本には、徐乾学(1631-1694)の「通志堂経解」本と、盧文弨(1717-1796)の「抱経堂」本の二種があります。両者とも、宋本を影写した、明末の葉林宗の本に基づくそうです。このうち、前者の「通志堂経解」本がより広く読まれています。 中華書局ではその「通志堂経解」本を影印して、さらに黄焯(1902-1984、字は耀先、黄侃の甥)という学者の校勘記をあわせて出版しています。現状では、黄焯の校勘記を参照しつつ「通志堂経解」本を利用するのが最も便利だと思います。 『經典釋文』中華書局、1983年。 黄焯彙校『經典釋文彙校』中華書局、1980年。 黄焯、鄭仁甲編『經典釋文索引』中華書局、1997年。 なお『経典釈文』の体例を示し先行の注釈を総括した「序録」部