熟成と腐敗 魚の身肉の中には、呼吸によって作られ、筋肉の収縮や発熱に大きな役目を果たすATP ( アデノシン三リン酸 ) と呼ばれる物質が含まれています。ATPは鮮度に直結する成分であり、分解して時間とともに増えてくるイノシン酸 ( 旨味成分 ) とヒポキサンチンの割合は、鮮度の低下をあらわす指標 ( K値 ) としても利用されています。 生きている間は筋肉が疲労しても、呼吸によってATPが補給され、また元の状態に戻ります。しかし、死んでしまって新しいATPが来なくなれば、細胞内の成分を消化するしかありません。 ATPが枯渇すると筋肉を構成するタンパク質のアクチンとミオシンが結合します。これにより死後硬直が始まり、ADP → AMP → IMP → HxP → Hxへと一方通行の自己消化反応が進みます。 魚肉は死後硬直後から細胞内の酵素が働いて、旨み成分のイノシン酸が増えてきます。これは人