ソドミー百景 | 19:50 | 「このへんにおトイレないですか?」幼い声がした。Aがおもむろに振り返ると少女が立っている。少女は公園の緑の鮮やかさに溶けるような愛らしさでそこに立っている。「どうしたの?」、と野暮な男の問い返し。返事は再びなく、栗色の髪を震わせながら目の前のニンフは落ち着かない。そうか、トイレか。見回したがトイレはない。昼下がり、木漏れ日が少女を神秘たらしめる。仕方ない。俺が誘ったわけじゃないし、と男の開き直り。Aは公園を駆けた。途中、枯れ枝を踏んだ。蝉かコガネムシかもしれない。背中にはニンフの温み。「大丈夫?」「うん」「もうちょっとだからね?」「うん」ぎこちないことばの応酬。「着いたよ」「うん」息を切らしながらAは玄関を勢い開け放つ。「入ってすぐ左のドアね!」「うん!」ひとつになった心、声の張り。ゆがんだ眉、汗の粒が滝となってニンフを汚してゆく。少女がトイレに駆け込んだ