「また失恋」友の指点字 2007年04月16日15時01分 目が見えず、耳も聞こえない。 指点字。通訳者がピアノを弾くように福島智さんの指に伝える 福島智さん 福島令子さん 「ヘレン・ケラーの世界って、どんなんやろ?」 福島智(ふくしま・さとし)(44)は8歳の夏の日、裏山で目を閉じてみた。一歩踏み出す。足元が崩れ落ちそうで、怖くて目を開けた。蝉時雨(せみしぐれ)、むせ返るような緑の午後だった。 3歳で目に異常がみつかり、5歳で右眼(め)を摘出。9歳で左の視力も失う。だが、やんちゃで白いつえで動き回り、ピアノも弾いた。18歳で音を奪われ、ヘレンと同じような障害をもつ身になる。 ◇ 無音漆黒の世界にたった一人。果てしない宇宙に放り出されたような、孤独と不安。「人とのコミュニケーションは、魂にとっての水、酸素。それなしでは、まるで『牢獄(ろうごく)』にいるようです」 友人に点字の手紙を出した。