D&Dに関するe_tackyのブックマーク (271)

  • 第3幕『勿忘奏楽』その5: プレイレポートbyたきのはら

    楽の音が響く。妖に負けぬ、艶やかで華やかな――いや、賑やかな音曲(おんぎょく)。三姉妹も各々の楽器を手にする。絡まりあう楽の音。が、融け合いはせぬ。三姉妹の音色は互いに絡まり合い融け合い、そうして芙蓉の奏でる歌から旋律を奪おうとしている。それに気づき、屋根の上で小滝は身構えた。いざとなったら割って入ろうかと思うたが、楽の音のやりとりから既に戦いというわけか。まさかとはじめは耳を疑ったが、確かに音色のやりとりの中で、三姉妹は芙蓉から曲の流れを奪おうとしていた。楽師同士の意地の張り合いとも思えぬ、この姉妹、かならずや西行妖といかほどかの関わりを持つに違いない。芙蓉が見守る鬼龍と吉野に目配せをする。手拍子を。よォし天狗仕込みの威勢のいいところをひとつぶちかますぜと吉野が勢い込んで手を打ち鳴らし、鬼龍も合わせる。が、三姉妹の楽の音は揺らぐ様子もない。ふた節も奏でぬうちに琵琶と手拍子は奏楽からこぼれ

  • 第3幕『勿忘奏楽』その4: プレイレポートbyたきのはら

    戸の陰から覗いたのは、面であった。 ひっそりと目を伏せた、美しい小面(こおもて)の面である。面だけ見たなら感嘆の声を挙げたろうが、ひとけのありともなしとも知れぬ屋敷の扉からそれが覗くのは、決して気持ちのよいものではない。 面の周囲に黒い衣が垂れ下がっている。戸はたしかに手をかけて引きあけたものと見えたが、そこから見えるのはだらりと垂れ下がる袖ばかり。それはまるで、幼子が頭から母御前(ははごぜ)の小袿(こうちぎ)を被り、ちょこんと覗いた顔には面をかけたとでもいうような。 「怪しい奴。さては化け物か」 背後で鬼龍が大鉞を握りなおす気配を感じ、芙蓉はとっさに玄関に駆け寄った。 「あの、ご親切に。ありがとうございます」 「ああ、お泊めしてさしあげるのですね、月沙(つきしろ)のお姉さま」 戸口を人がくぐる気配をききつけたか、老女が言う。ならば、まちがいない、この小面をかけた黒衣の小さな姿が老女の“姉

  • 第3幕『勿忘奏楽』その3: プレイレポートbyたきのはら

    小滝が女たちと話している間に。 「わかったからその手を離しておくれよ、化けるから」 鬼龍の手の下からどうやらすり抜けると芙蓉は宙返りをひとつ、若い娘の姿になった。市女笠のぐるりから唐虫(からむし:絹の薄布)を垂らし、いかにもよい育ちの娘がよんどころない事情あって旅をしているというふう。だが 「あれ。これでは兄さんたちと一緒に居てはおかしいかしら」 ふと顔を上げ、鬼龍と吉野の――山野に随分と鍛えられた――姿を等分に見てもう一度宙返りをしようとするのを鬼龍がぐいと押し留め、 「そのままで居れ」 とこうするうちに、小滝が戻ってくる。かくかくしかじかと事の次第が繰り延べられると、吉野はひとつ頷き、 「よし、では早速その桜を検分にいかねばならん」 なあ、と後ろを振り向きかけ、はっと言葉を留める。そうだ、妖夢は幽冥界のあるじ様に顕界の春を奪うわけを問いただしに行っていて、もうここにはいないのだ。 「ど

  • 第3幕『勿忘奏楽』その2: プレイレポートbyたきのはら

    もうここまでくれば犬も追ってこないかとようやく女たちが足を止めたところで、もし、と涼やかな声。振り向けば 「あれまあ、験者(げんじゃ)さま」 「こんなところに、なんてきれいな」 若い方の女がそういって、微かに頬を赤らめた。 声をかけたのはもちろん小滝である。普段より少し声を低く落とし、そうするとすっかり凛々しい美少年の修験者の体(てい)である。ああ、験者さまがいらっしゃるというのにわたしどもときたら生臭ものを持って、と、女達が慌しげに道の端に避けかけるのを 「ああこれ、わしはまだこれより勧行(かんぎょう)に向かおうという身、生臭ものを口にすることはならぬが、わざわざと遠ざけるには及ばぬ」 それよりも随分と急いでいたようだが、何かあったのか。 犬が出たのですよ、と若い方の女が言った。 「なに、犬が」 「はい、最近の犬は性悪で人を喰ったりいたします」 「なんと」 これ、めったなことを言うものじ

  • 第3幕『勿忘奏楽』その1: プレイレポートbyたきのはら

    海沿いをごとごとと列車は走ってゆく。静岡に入ってもうずいぶん来ただろうか。 浅い春か冬の名残りか、傾きかけた日の中で、打ち寄せる波頭は鈍い灰色にけぶっている。 「このあたりは、初めてですか」 突然、隣から声がかかった。見ると、さっき乗り合わせた品のいい初老の紳士である。 「いや、何、この変哲もない景色を熱心に眺めておいでだったから」 自分はこのあたりの生まれなのだと紳士は言った。言葉を交わすうちになんとも好もしい人物であるように思えたので、つい、劇作の種を探す旅なのだということを打ち明けた。そうすると紳士は俄然目を輝かせ、 「でしたらなかなか面白い話を知っていますよ」 と言った。 このまましばらく行った先に垂水(たるみ)の浦と呼ばれる場所があるという。そこは岩山が海岸近くまで迫り出し、岩の洞がいくつもあり、舟を出して海から眺めるとなかなかの絶景なのだとか。 「その洞の中にはこのあたりの漁師

  • 曙草東道行:第3幕『勿忘奏楽』前口上: プレイレポートbyたきのはら

    というわけで、主にDMの趣味で“東方プロジェクト”風味を混ぜながら遊んでいる中世日D&D4版キャンペーン、『曙草東道行』第3回レポートです。 いつも、遊んだ人だけに見えるところで下書きしてから一気にこちらにアップするという方法を取っているのですが、それがなんだか偉く評判悪い。なかなか更新がないと思ったら、ある日いきなりどかっと薄い文庫1冊くらいにはなろうかという量が更新されているのでは読むほうはちょっと読みづらいとか何とか。 ……というわけで、今回から、物語にしっかり裏側をつけながら1日1~2エントリずつアップする短期連載型にしようかと。ちょっとはマシかなぁ。マシだといいなぁ。 前回までは鬼龍(ゴライアス・ファイター)、吉野(ヒューマン・ローグ/ファイター)、小滝(エラドリン・ウィザード)、芙蓉(キツネ・バード)、そしてNPCの妖夢(シャダーカイの……ええと何だっけ、ファイター?)とい

  • 第2幕『山中遇鬼』その11: プレイレポートbyたきのはら

    ☆ 「酒呑童子の身体は今度こそ首を亡くしたわけですな。かつてその首だった小鬼がそれを嘆いたかどうか……」 館長は窓の外を見て湯飲みの茶を飲み干した。 「ともあれ、その小鬼は鈴鹿の山塞に残ったようです。自分の身体が陰の鬼と化し、桜の名所を陰に沈め、この地に害をなしたことを恥じその後始末をするために。後始末といっても、まあ、宴会なのですがね」 「宴会?」 「そうです、陽の鬼が宴を開くことでこの地に陽の気が振りまかれていたのだというのですね。そこで、」 言って、館長は机に積んだ書物をごたごたとかき回し、一冊を取り出した。 「これですかね。十日に一度、山の祠にお神酒を捧げるという風習のある村がありましてね。場所としては先ほどお話した伝説とは少しばかりずれるのですが、おそらくこれが元でしょう」 酒好きの伊吹童子が酒を切らさずに楽しく呑んで陽気を振りまけるようにとのことだったのでしょう、と館長は鹿爪ら

  • 第2幕『山中遇鬼』その10: プレイレポートbyたきのはら

    いよいよ扉に手をかける。 生臭い風がふっと臭った。 扉を開け放つ。 板敷きの広間の中には鬼が六匹ばかり。小柄な赤鬼が四匹、黒鬼のこれは見るからに大将格なのが一人。そうして中央で大あぐらをかいているのは。 「あ、あたしの身体!!」 いつの間にか芙蓉の尻尾の間から這い出した伊吹が、悲鳴のように叫んだ。 鬼の砦を統べるのは、豊満な体躯を誇る艶やかな鬼女。 鬼龍を遥かに凌ぐ巨躯だが、醜いどころかむしろ圧倒されるほど美しい。はだけた衣の胸元からはちきれるほどの胸をこぼし、 その上から胴丸鎧を着込んでいる。 それが、小狐の頭の上にしがみつく、ちっぽけな小鬼の身体だったという。 肩の上が空洞でないところを見ると、身体を失った首が霊力でちいさな身体をこしらえたように、首を失った身体も新しい首をこしらえたらしい。が、首をなくしたときに陽気を失ったか陰気に侵されたか、その身は以前とは似ても似つかぬ化け物と成り

  • 第2幕『山中遇鬼』その9: プレイレポートbyたきのはら

    山が深くなるにつれ、雲行きが怪しくなってきた。花曇かと思えた空は、やがて黒く低く垂れ込め、遠雷さえ耳を打つ。と見る間にぽかりと道が開け、崖を背にして砦作りの巨大な館が巨大な門を構えている。 「これか」 「これだよ、変わってないねえ。扉が閉じてるの以外は」 芙蓉の頭の上で伊吹が答える。目の前の門は、呆れるほど頑丈そうな鉄扉をぴたりと閉じて収まりかえっている。 「どうやって入る、門よりほかに道はあるのか」 「さあねえ。門以外から入ったこと、ないからねえ」 抜け道はないか、いや背後の崖から降りるべきかとひとしきり首を捻ったが、もう少し酒を飲めば思い出すかもしれないなどと言っていた伊吹が徳利一空けた途端、 「真正面の出入り口以外、知らないよ。もういいからどーんと行っちゃいなよ!!」 と、けらけらと笑いながら言い出したのでもう手の打ちようがない。うろうろしていて門内からなんぞ仕掛けられるよりはと、

  • 第2幕『山中遇鬼』その8: プレイレポートbyたきのはら

    と。 「あれ、嫌だねえ。せっかくの相撲場が」 およそ場違いな声。 芙蓉の絡まった3のしっぽの間からもぞもぞと這い出してきた、伊吹である。 「やだねえ、なんて陰気になっちまったんだ。嫌な臭いがぷんぷんするよ。あたしたちがここで酒盛りしてた頃は、桜もあんないやらしいものじゃなかったし、お天道さんかお月さんがきれいで、さもなきゃいい風が吹いて、居るだけで酒が旨くなる場所だったのにさ」 「それじゃ、ここが間違いなくあんたたちの相撲場だったんだな。長者が鬼から瘤をもらったという」 「そうだけど、ああ、ホントにこんな場所じゃなかったんだよ」 吉野に答えながら、芙蓉の首に結びつけた瓢箪を持ち上げたのはもちろん中の酒を飲むためだが、伊吹はそこでふと手を止めた。 「もしかしたら、陰の鬼の連中かもね」 「……なんだ、そりゃあ」 鬼龍が身を乗り出す。やれ桜の妖だ死を誘う気配だと言われればお手上げだが、鬼という

  • 第2幕『山中遇鬼』その7: プレイレポートbyたきのはら

    長者が鬼の相撲場で貰ってきたのは福などではなく瘤の形の化け物で、そうして長者はとっくの昔に魔物に喰われてしまっていたのだと聞き、下働きの者たちはかえって安堵したふうであった。 何でも瘤を貰ってきて以来長者殿は肉を好むようになり、それどころか自らどこからか肉の包みを手に入れてきてはこれを料理しろと言うことも度々であったという。 「最初は知り人に腕の良い狩人でも居られるのかと思いましたが」 時折その肉の塊に、人の髪の毛や爪の切れ端が混ざっていることがあり 「薄気味悪くは思うものの、長者さまに耳元で何事かささやかれると、ぼうっとなってなにもかもそれでよいように思えてしまいまして」 そのまま唯々諾々と肉を料理しては卓に上げていたのだという。 「それに近頃は近隣の村で神隠しが相次ぎまして」 誰それが神隠しにあったと噂が伝わってくる時には、必ず肉が卓に上っていたのだという。 いぶかしく思うことも幾

  • 第2幕『山中遇鬼』その6: プレイレポートbyたきのはら

    蔵には鍵がかかっていたが、吉野が小刀で錠前を2、3度つつくとことなく開いた。扉を引き開けると、むっとするような生々しい血の臭い。そこここに置かれた桶にはなみなみと血が溜まり、床にも点々とこぼれている。そうして天井からは肉を吊るすのにちょうどよさそうな鉤、壁に立てかけられた石の大まな板の脇には、牛一頭でも楽に捌いてしまえそうな肉切り包丁が添えられている。 それだけではない。耳を澄ますと、熱に浮かされた子供とも聞こえる呻き声が、蔵のずっと奥まったところからかすかに、しかし確かに聞こえてくる。 まるで床の間のように一段高くなった場所に据えられているのは 「やれやれ、薄気味の悪い。――なんだ、これは、首桶(くびおけ)じゃないか」 見たとたん吉野は声を上げる。しかし、確かに人間の首がひとつ納められるほどの、蓋をした桶の中からその高くか細いうめき声は聞こえて来るのだ。 直に触れるは気が進まぬ。吉野はや

  • 第2幕『山中遇鬼』その5: プレイレポートbyたきのはら

    ☆ 離れの一室。 一同、わずかに開けた障子に手をかけ、膝元にそれぞれの得物をおいたまま、出ていった芙蓉が戻ってくるのをじりじりと待っている。と、突然母屋の方から凄まじい悲鳴が響いた。人の喉の出せる声ではない。 「行くぞ!」 手元の得物をひっつかむとそのまま走り出す。母屋のほうを見れば、床下から走り出す白狐、そしてその後を追って走り出してくる骨の化け物が五つ、六つ。小滝はそのまま庭に飛び降りる。 「待てい! ぬしらの相手はわしが致す!」 狐が飛び出してきたのは、母屋のおそらく仏間のあたりから。鬼龍と吉野は襖を叩きつけるように開けながら、そのまま廊下を走る。 三枚目の襖を引き開けた刹那、吉野の目に映ったは地獄絵図。山台に人の首がいくつもいくつも盛られ、それぞれに恨みと苦悶の呻きをあげながら蠢いている。それが化け物の背中に生えた無数の瘤なのだと思い至ったときには、既にもう右手の赤鼻丸が瘤のひとつ

  • 第2幕『山中遇鬼』その4: プレイレポートbyたきのはら

    運ばれてきた夕餉(ゆうげ)は、山奥の里であることを考えに入れなくとも十二分に豪華なものであった。数々の山の幸に加えて、腕の良い狩人でもいるのか肉までも皿の上に盛られている。椀を覗けば吸い物の実にも肉切れが浮いていた。 「村人たちがああもやつれていると言うのに、我らだけこのようなもてなしを受けるのも心苦しいが」 言いながら鬼龍が箸を取る。 「いや、村人たちもこれだけのものを口にしながら、あのようにやつれているのかもしれぬぞ」 まるでおかしくもないことのように小滝が言う。 「それは、どういうことだ」 「たとえば精気を吸われるとか」 「それとも、さっきの白犬のように血を吸われるとかか」 「……まぁ、おそらくそういったことだろうがな」 淡々と言いながら、小滝は膳に盛り付けられた肉を摘んで選り分け、皿の隅に積み上げる。修験の道を修める小滝は殺生のものを口にしないのだ。 どうしても並んでは膳に着こうと

  • 第2幕『山中遇鬼』その3: プレイレポートbyたきのはら

    やがて、山中が切り開かれ、いくつも明かりが灯っているのが見えた。 「あれが瘤取り村だ。ずいぶん昔だが、一度来たことがある」 鬼龍が言った。山の中の里とも言うべき村で、山人の商売相手でもあり、また刳り物や細工物などを山に暮らす人々から買い付けては里に売る仲買のようなこともしているという。山人の交易に用心棒として同行することの多い鬼龍は、この村のあることを知っており、ここを今宵の宿にと考えていたのだ。 「山を行くもののための宿も構えておったはずだ。行くぞ」 ほら、もうこうなったら普通に同道したほうがいいでしょう、と狐姿のまま芙蓉が妖夢の裾を咥えて引っ張る。が、寄って来た妖夢を鬼龍がじろりと睨む。慌てて妖夢が後ずさろうとするのをまた芙蓉がぐいと引き寄せる。 「あ、あの、私はいったいどうすれば……」 「ええ、面倒な。話は先ほど鬼龍殿より聞いたが、どの道同道しておるのだから一緒に来ればよいではないか

  • 第2幕『山中遇鬼』その2: プレイレポートbyたきのはら

    一方、鈴鹿山中。 二人の男が連れ立って歩いて行く。 一人は巌が生命を得たかと思われるような偉丈夫、いま一人はどこか山育ちの獣さえ思わせるような、きびきびとした身ごなしの若者である。そして若者の腰には二の短刀に加えて、ほころびかけた蕾をつけた桜の若枝。 鬼龍と吉野に遅れること十間ほど、間を詰めもせず開けもせずついて行くのは相変わらず若武者に身をやつした妖夢である。これは曙桜の初枝のもたらす春の気に感応してその地の桜が開こうとするときに、それぞれの地の初枝を集めて歩こうとするものだったが、何故か先を行く二人の男に並んで歩こうとは決してしないのだ。 三人が行くのは山中の道とも言えぬ踏み分けである。その傍らで小さく枝が鳴る。踏み分けでさえない場所を、時には二人の男に近づき、時には後ろを行く妖夢を気遣うようにしながら、小さな白狐も旅に同行している。 「おい、娘はまだついてくるのか」 「離れようとも

  • 第2幕『山中遇鬼』その1: プレイレポートbyたきのはら

    鬼の砦に隠れ里伝説、舞台とするにはこのあたりがいいだろうか。 窓の向こうに鈴鹿山脈を望む小さな文書館で、資料になりそうなを山と積み上げながら、私は逡巡していた。 とりあえず一行は京の都から出発して東国に向かい、そのままみちのくを目指すというのが自然だろう。さて、では春の桜の終着点はどこにしたものか。山人に桜を持ち来るよう頼んだのが金売り吉次というのなら、やはり最後は奥州、平泉を結びの地としたものか。 そんなことを考えながらページを繰るうちに、ふと目に留まった一文章がある。 ――このとき、能登(のと)の国、石動山(いするぎさん)より小滝坊なる天狗がこの地を訪ない、数名の仲間と共に鬼の館を平らげたと伝えられている。小滝坊は天狗とされているが、一説には観音菩薩が修験者の姿を借りて現れたものとも、天狐すなわち稲荷神の使いともいわれており…… 受付に行って、小滝坊と鬼退治のことについて調べたいので

  • 曙草東道行:第2幕『山中遇鬼』前口上: プレイレポートbyたきのはら

    というわけで、和モノD&D、第2回レポでございます。 今回は『山中遇鬼(さんちゅうにおにとあう)』。人里離れた山の中に飛び地のように存在する交易の村、鬼の相撲場と呼ばれる桜の名所。そこでPC一行が見たものは…… 前回は純ファイター、ローグ/ファイター、バードの3人組だったのですが、それだとバラエティ豊かな魑魅魍魎をぶつけると色々と大変なことになり過ぎる……というので、この回からエラドリンのウィザードが入りました。エラドリンは中世日にはおりませんので、ここでは大天狗という扱いです。 この『曙草東道行』キャンペーン、テーマが桜と春にあるのですが、第1回の時点ではPCの側にこの桜を持ち歩くキャラクターはいても、桜の意味を知って管理するキャラクターはいません。バードの知識で何でも知ってます、ってわけにもいかなくなったし、そもそもそれじゃ風情がない。 というわけで、今回登場する天狗は“桜守の一族”

  • 第1幕『今弁慶』その11: プレイレポートbyたきのはら

    そうして結局、五条大橋の鬼は退治されたのでしたよ。 そう亭主は言って、笑った。 もう日はとっぷりと暮れて、擦りガラスの向こうは雪明りでほの白い。 「積もったようですが、なに、淡雪です。明日の朝には融けるでしょう」 そろそろお事の支度をしましょうかと言いながら、亭主は立ち上がった。 「待ってください、鬼は退治されたとして、結局彼らは、その、天狗の弟子だとか狐だとかはどうなったのですか? 刀は、そして桜は?」 「おやおや。……私がしようとしたのは鬼の話です、刀も桜も余分な話……けれど」 座りなおして亭主は言った。 「彼らはね、東下りをすることになったのですよ。曙桜の初枝を持ってね。春、桜林の中で最初につぼみを結び花を開く枝には、春の気が凝るのです。その、幽明の境を越えてやってきた娘がその初枝を、端から取っていってしまったものだから、その年はいつになく春が遅かった……だから、彼らは千桜の里の

  • 第1幕『今弁慶』その10: プレイレポートbyたきのはら

    次の夜は満月。 月の光に照らされ、幽冥界の力がくっきりと顕界に及ぶ夜。 必ずや――あの鬼は、現れる。 橋のたもとで1日休んで鋭気を養った4人――吉野、鬼龍、芙蓉、そして桜花は武器を手元に置いて、橋の方を伺っている。 「そう言えば、申し忘れたことがありました」 急に桜花がぽつりと言った。 「何」 「幽々子様の名を言って、私が名乗らないでよいという法はございませぬ。私が五条桜花というのは偽り、私は西行寺家に代々庭守として仕える魂魄家の妖夢と申します」 「橋姫でも桜の姫さまでもなかったのね」 にこりと芙蓉が笑ったとき、急に生臭い風がどっと吹きわたった。橋のたもとでぼろにくるまっていたにとりが顔をしかめる。 「この世の風じゃない」 答えるように月に群雲がかかり、橋の上が急に陰になった、その中から。 ぼうっと陰火が点り、うっすらと影のようだったものがたちまちに形を成す。と同時にちゃんちきちゃんちきと