姉上さま、それは、と、明玲の女君、瑠璃光の女君が立ち上がりかけるのを押さえ、月沙の女君は一行四人の前に居住まいを正した。 「恐れることはありません、まだ日も暮れかけたばかり、御箱様(おんばこさま)もまだ目覚めてはいないでしょう。 ――何もかもお話しいたします」 私どもが麗の姉であり、病に倒れたと言ったのはすべて偽り、そらごとです。虹川の大殿が病で死に、麗が同じ病で目の光を失ったのは本当の話。けれど麗の三人の姉は既に嫁いでおり、この屋敷にはおりませんでした。誰もいない屋敷に、麗は一人取り残されたのです。 ところで、この屋敷には――それとも虹川家に持ち伝えられてきたものだったやもしれませぬが、御箱様と呼ばれるものがありました。それは力あるもので、祈り頼めば願いを叶えてくれたのです。 麗はその御箱様に祈りました。幼い頃に都で何不自由なく、三人の姉と共に暮らしていた幸せな時を我が身に戻してくれと。