牧 英正 著 2014年7月30日発刊 定価: 8,000円+税 江戸幕府の支配では、まずは前例が尊重され、争いがあって訴訟となり裁許があると判決が積み重ねられて制度が構築された。 延享年間(1744~48年)に、非人頭車善七らは 穢多頭淺草弾左衛門以下を手下にしたいと願い出た。しかし評定所はこの訴えを退け、逆に弾左衛門の非人頭以下に対する支配を確認し、願い出た関係者を死罪とした。この年から非人たちは弾左衛門に、規律を守ることを誓う「年証文」を提出することになった。こうして江戸幕府のもとでは弾左衛門右衛門の支配が確立した。著者は、この訴訟を日本の部落史のエポックであったと考える。 幕府の大名たちへの権力が相対的に強まった江戸中期以降、大名たちは、領内の穢多・非人に対する扱いについても伺をたて、幕府の機関はこれに答えた。これらの問答は書写されて流布した。こうして幕府の賤民制度は全国化する。