アナーキズムの隘路をめぐって――即時的な解放欲求の中で 文=今田剛士 思想史上においてアナーキズムは、20世紀前半に衰亡した古典的な思想および運動とされている。しかしながら近年、その死に絶えたはずのアナーキズムが、全く新たな相貌を備えて復権したかのような印象を持つことが少なくない。 「反グローバル化」運動における非集権的なネットワーク組織や直接行動的な運動への志向。日本国内においても、新自由主義経済の矛盾に抗議する動きの中で見られる、営利企業に代わる自律的な自発的結社への注目、目的合理的成果よりも表現的なものを重視したデモンストレーションなどが、再びアナーキズムへの関心を高めているようである。 無論、これらをある特定の主義として括ることは正当ではない。それでも既存の政治への不満が、幾つかの点でアナーキズム的傾向を有する表現形態をとりつつあるとするなら、かつてのアナーキズムの問題点を参照する