芸どころ名古屋の象徴とされる老舗劇場「御園座」(名古屋市中区)が三月末で閉鎖されるのに伴い、併設されている中部地方で唯一の演劇専門図書館の所蔵品が散逸の危機にある。御園座の百二十年近い歴史を伝える資料をはじめ、歌舞伎や文楽など古典芸能の貴重な資料も多く、全国の専門家の間では心配する声が出ている。 (浅野宮宏) 図書館は資料室として発足し、一九七三年に一般公開が始まった。二年後に貸し出しも開始、御園座の会員なら図書を借りて館外に持ち出せる。蔵書は演劇関係を中心に二万九千冊で、現在は月、水、金の開館。歌舞伎公演中は二十人ほどが利用する。 プログラムや台本がそろっており、役者の利用も多い。一八九七(明治三十)年五月十七日の御園座こけら落とし興行の一枚番付(プログラム)など「創業百十八年の老舗ならでは」の資料や、歌舞伎役者の化粧を和紙に写した隈(くま)取り、文楽の義太夫のレコードなど、古典芸能の資