脳死は人の死を前提とする改正臓器移植法(A案)が成立した。脳死状態と診断後に亡くなった次男の腎臓を移植のために提供した経験を持ち、厚生労働省の「脳死下での臓器提供事例に係る検証会議」のメンバーでもあるノンフィクション作家、柳田邦男さん(73)に聞いた。 今回の採決では、ドナー家族への十分なケアや支援をしっかり盛り込んだA案の修正案が否定されたことが重要な意味を持つ。これまでに行われた八十一例の脳死者からの臓器提供を検証し、心的外傷後ストレス障害(PTSD)やうつ病になるなどドナー家族が現実に抱える問題が分かった。A案は臓器の数を増やしたいという一点に絞られてつくられたが、参院では、A案提案者自身にドナー家族に配慮する修正条項を加えてほしかった。 だが、A案推進派のすさまじいロビー活動で、ドナー家族を守ってこそ、よりよい移植医療が行われるという配慮が吹き飛んでしまった。「自分たちは臓器さえも