『老子』の成立時期はいつ頃かというのは難問の一つのようだ。諸説あって、私のような素人にはなんとも判断がつかない。 けれども、『老子』は『荘子』に引かれている以上、『荘子』よりは先に成立していたと想定するのが自然だろう。ただし『老子』を引いている『荘子』が歴史上の荘周の筆によるものとは限らない。 『孫子』もややこしい。『史記』によれば孫子と称される兵法家は二人いて、春秋時代に活躍した孫武と、その子孫で戦国時代に活躍した孫臏とがいて、現在『孫子』という題名で知られている書物の筆者がどちらなのか、よくわからないらしい。岩波文庫の解説者は戦国の孫子説、講談社学術文庫の解説者は春秋の孫子説である。 それはともかく、なんでそんなことを気にしているかというと、実は「責任」という語のニュアンスについて悩んでいたからだ。 現在使われている「責任」という漢熟語は、ヨーロッパの言葉(responsabilité