安藤忠雄は、この1977〜81年という時期に表層の特性を活用し、作風を確立した建築家だ。言い換えると、彼は本論考で叙述し始めている「ポストモダニズム」の歴史の中に位置づけられ、建築における表面性を発見した建築家の一人である。 安藤忠雄「住吉の長屋」1976年(写真:倉方俊輔) こう記した時に予想される反論を、まず書こう。 彼の画期は「住吉の長屋」(1976年)であって、1977〜81年は作品はその延長上にあるので、特段、時期として問題にする必要はないのではないか。安藤忠雄こそ、軽佻浮薄なポストモダニズムに流されずに自らの信念を貫き、虚飾を排し、人間的で、周辺環境に呼応した作風によって近代建築の初心を取り戻し、その後の世界的なモダニズム回帰の潮流を先導した巨匠であるのに、何を言っているのか。安藤作品の魅力とは、厚みのある打ち放しコンクリートによる幾何学的な空間が、現地を訪れて初めて分かる感動