異種と協働する精神 詩人としての半生を熱く語る、その語り口が何とも魅力的だ。吉増の詩精神は、幼時の空襲の記憶に通じる、「非常時」の感覚にまで自身を追い込んでいくことにあるのだという。その対極にあるのがいわゆる「優良文化人」の世界で、それを忌避し、ぎりぎりまで「辺境」をめざすラディカリズムにこそ、その詩作の真骨頂があるわけである。 こうした資質が一九七〇年前後の芸術界を覆っていた、ある種ラディカルな空気と幸福な結合を果たしていく過程が本書のみどころだ。芸術の“純化”を拒否し、常に異なるものとのコラボを志向してやまぬこの詩人は、美術、音楽、舞踊の世界とのさまざまな“協働”を繰り広げていく。たとえば幼時の疎開中に見た「舞う女」の記憶が大野一雄、土方巽ら前衛舞踏とのコラボにつながり、さらに島尾ミホとの関係を生み出していくことにもなったのだという。彫刻家、若林 奮 ( いさむ ) から、化石ハンマー