教科書の年表に載っていることだけでは歴史の真実はわからない。日本史研究者の本郷和人さんは「日本における恋愛文化、性愛文化はどんなものだったか。例えば中世から近世の入り口である戦国時代にかけては、遊女の立場がある性病の登場によって転落し、家康の息子ら戦国武将の運命をも変えてしまった」という――。 ※本稿は、本郷和人『恋愛の日本史』(宝島社新書)の一部を再編集したものです。 鎌倉時代までの遊女は天下人の母にもなれた 中世における女性の力というものを考えたとき、より外部的な存在でありながらも、ある種のワイルドカードのような力を持っていたのが、遊女たちでした。母親の実家、つまり母親の出自が重視された時代にありながら、遊女たちは出自に関係なく、権力者に気に入られれば、こうした身分秩序を一足飛びにして、大きな影響力を持つことができたのです。そのため、貴族の跡取りで、母親が遊女だったという例は少なくあり