この小説を私が初めて読んだのは、中学生のとき。そのときは、海洋冒険小説としてしか読むことができませんでした。いや、確かに海洋冒険小説でもあるし、そのジャンルでも第一級の作品で、十分楽しく読むことはできたのですが、でも、それはこの小説の一部でしかない。何を言っているのか分からない抽象的で難解な箇所や、延々無駄話が展開されている箇所も多く、子供の頭では、正直読むのがしんどかったです(特に宗教談義は、今読んでも非キリスト教徒には絶望的に理解しがたい)。 大体、この小説、海洋小説と言われながら、主人公がなかなか海に出ないのです。イシュメール(放浪者)の名前よろしく、あっちふらふらこっちふらふら、上巻の半分までは、こいつが港町でくだ巻いているだけの話です。またこのイシュメールが、語り手という役割もあって、神経症的によく喋ります(反対に、もう一人の主人公エイハブはほとんど喋りません。二人は逃亡/挑戦、