2022年2月5日22時。某TOHOシネマズ第一スクリーン。 一際広い劇場内に敷き詰められたシートの中心の一席、J-22。 そこに一人の男性が呆けた顔で座っていた。 いや、特徴的なのはその顔だけではない。その両手両足を乱暴に投げ出し、尻は座面からこぼれ落ちそうなほどずり下がり、首は赤子のように垂れ落ちる。だがかろうじて眼球だけは、正面のスクリーンを向いていた。 何を隠そう、俺である。 炎上必至の数々のマナー違反は許して欲しい、レイトショーだからか左右どころかその列には誰もいなかったのだから、誰にも迷惑はかけていないもん、と駄々をこねることも許して欲しい。それになにより、彼は普段はこんなことはしない。映画に限らず定められたマナーを守る善良な一市民なのだから。原因はただ一つ、目の前のスクリーンに映る映像だった。 「大怪獣のあとしまつ」 クソつまんなかった。 本当にクソつまんなかったなあ。 以下