元日に、携帯電話が鳴った。 画面の表示には「那須大亮」とあった。 年始のあいさつを交わしたあと「報告があります」と律儀な36歳のベテランは言った。それは5年間在籍した浦和レッズを離れるという一大決心だった。 「浦和で現役を終えるという選択肢もありました。でも最終的には自分の年齢も考えて“新しいチャレンジに向かいたい”と、自分の気持ちに従うことにしました」 浦和とは単年契約だったが、延長オファーを受けていること、ほかのクラブから移籍のオファーがあることは以前に聞いていた。 すっきりした口調に変わっていた。元日の電話から5日ほど経って、ヴィッセル神戸の獲得報道が流れた。 スタッフ、サポーターの思いが伝わってくるように。 サンシャイン池崎のセリフではないが、彼は“浦和を愛し、浦和に愛された男”であった。 空前絶後の熱血男。 エアバトル、咆哮、目を血走らせての競り合い……。気持ちを前面に押し出すフ