本書は、東京国立博物館が所蔵する「東海道分間延絵図」(重要文化財)をはじめ、二二の分間延絵図(以下「延絵図」とする)に描かれた一七〇近い被差別民やその居住地の状況を、第一線の研究者一四名が、各種史料から具体的にあとづけたものである。同書が編まれた具体的な経緯については、巻頭にある監修者の寺木伸明と藤沢靖介の「はじめに」および部落解放同盟中央本部の辻本正教の「『街道絵図に描かれた被差別民』の刊行に寄せて」に依拠されたい。 本書は、総論と各論の二部から構成されている。( )内は執筆者。 まず総論には、「一、『五街道分間延絵図』と被差別民集落」(寺木伸明・大熊哲雄・藤沢靖介)「二、今日の前近代部落史研究―その主要論点」(藤沢靖介) の二編が収められている。前者は、「絵図作成に関わった人びとが何をどのように描き込もうとしたのかについて、さらに検討を加え、そのことによって被差別民集落の描写・記録