幾何学の源流はユークリッドによる 原論(Elements)である.漢訳名は幾何原本(前半6巻は1607年にマテオ・リッチと徐光啓により漢訳された)であるがここでは日本語版([6])に従って原論ということにする.原論には序文,前書きのようなものは一切存在しない.また,動機や計算例も書かれていない.ただ,定義,公理,定理,証明が続くのみである.全体は13巻で構成されているが,各巻の構成は以下の通りである.最初の6巻は初等平面幾何,次の3巻は数論,X巻は無理数論,最後の3巻は立体幾何学である.ここでは,原論の歴史と内容について概観することにする. 目次 古代ギリシャ 原論の成立 原論の伝承 原論の教育史 原論の内容 参考文献 古代ギリシャ 紀元前9世紀頃から,古代ギリシャにはアテネやスパルタなどポリスとよばれる多くの都市国家が併存した.紀元前5世紀前半のペルシャとの戦争や紀元前5世紀後半から4世