医学博士号を取得後、私は医局人事でSセンター肝臓外科の一員となり、ガン手術と臨床研究の日々を送っていた。肝臓は食事をした栄養分や体内に入った毒素の処理を行い、エネルギーの貯蔵と凝固因子や創傷治癒因子などを作る、いわゆる体の製造工場である。すなわち、肝臓が働かなければ人間は生命を維持できない。だから、肝臓にメスを入れ、肝臓を大きく傷つけると働かなくなり、命を落とすこともある。 一方、肝臓はスポンジのように血液を蓄える血管だらけの臓器で、肝切除は出血との戦いとなる。 ある肝ガンの研究会で「肝ガンで肝切除をしようと開腹したが肝臓の表面に“ガン”が見えていたので、肝臓を切るためのマイクロ波メスの電極をそのまま“ガン”に刺しこみ、マイクロ波を照射した。すると、切除したのと同様、手術後のレントゲン写真で“ガン”がきれいに消えていた」という発表を私は聞いた。私はこの治療は簡単で出血がなく、画期的な治療だ