わたしが二年間ユレーヴェに浸かって寝込む羽目になった原因は、アーレンスバッハと深い繋がりがある貴族である。文官や護衛騎士がいる前で神官長が口にしたのはそれだけだったが、わたしが領主の養女となった原因もアーレンスバッハ貴族のビンデバルト伯爵だった。門番の父さんやオットーからその情報を得ていたプランタン商会とギルベルタ商会は明らかに顔色を変えてわたしを見た。 「以前、ローゼマイン様はアーレンスバッハの貴族に害されたと伺ったことがございます。まだ狙われていらっしゃるのでしょうか?」 代表して口を開いたのはベンノだ。立ち向かうべき敵を見据えようとする姿勢で神官長に尋ねた。トゥーリも青い瞳を強く光らせて神官長の答えを待っている。 「ないとは言い切れぬ。領地内の危険人物はなるべく片付けてから出るつもりだが、新しく入ってくる者に関しては私の目や手が届く範囲ではなくなる。貴族内の情報であれば側近達から得ら