ヒトをヒトたらしめていることの一つに、農業を営むということがあげられる。狩猟採集から農耕定住へと進化することで、食料の安定性を確保し、文明への新たな一歩を踏み出しのだ。 しかし動物の中にも農業を営むものがいるとは、知らなかった。しかも農業を始めたのが、人類よりも何千万年も早いのだというから驚く。それが本書で紹介されているハキリアリという生物だ。 もしも生物学者が会議を開いて「動物界の七不思議」を決めるとしたら、ハキリアリは絶対に外せない ― 著者にそうまで言わせるハキリアリは、中南米の本土では頻繁に見かけることができる昆虫だ。 著者はピュリッツァー賞を受賞したこともある人物。集団全体で一個の動物のようにふるまう、超個体としてのハキリアリの生態を、見事に描き切っている。 ハキリアリたちは葉を切り取り、傘を差すような格好で背中にかつぎ、大行列を行う。そしてバケツリレーのように葉を受け渡しながら
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