「おいっ、顔を上げて聞けよ!」---。新卒で日経BP社に入社して間もないとき、人事担当者にこう怒鳴られたことがある。配属部署の希望を聞くからと急に言われて、当社の雑誌リストが書かれた紙を見せられたときのことだ。 筆者は「えっ、そんな大事なことを即答しろと言うの?」と動揺した。紙を食い入るように見つめたまま、その人事担当者が各部署の説明をするのを上辺で聞いてしまった。人事担当者にとってみれば、新人のくせに人の話をいい加減に聞く無礼者に見えたのだろう。怒鳴られて当然だった。 いきなりそんな苦い思いを味わったので、記者として相手の話を聞く態度に気を付けるように努めた。しかし数年後にまた怒鳴られた。しかも、今度はこともあろうに取材相手からである。 コンサルタントのAさんは、深い洞察力と知見の持ち主で、いつも本質を突いた助言をしてくれる。筆者にとって非常に頼りになる存在だった。その日も、Aさんの話を
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