■個人の独自性から時代に迫る 鈴木道彦さん プルースト『失われた時を求めて』の全訳で知られるフランス文学者は、なぜ「在日」問題に取り組んだのか。その理由を含む、講演6編をまとめた。 プルーストと出会ったのは18歳の時。「私とは何か、という幼稚な関心でした」と言うが、のちに研究のテーマになった。 1954年、パリへ留学すると、フランスからの独立を求めるアルジェリア戦争が勃発した。「テロだ」と批判する世論に対し抵抗するサルトルに、関心を抱く。「これは帝国と植民地の問題だ。日本にも旧植民地の問題がある」と気づいた。 帰国した58年に小松川事件が、68年には金嬉老(キムヒロ)事件が起きる。どちらの犯人も「日本語しか話せない在日朝鮮人」で、そういう存在を作り出した日本人の「民族責任」を考えた。 金嬉老事件では、裁判の傍聴や、支援団体の「ニュース」への執筆などを、裁判終了後まで8年半続けた。「当初、も