マスメディアが発達した現在、「言論が一方向に振れる時」というのがしばしば現れる。本来、対立した意見が争われるべき状況において、マスメディアによる宣伝を媒介して、極端に一方の側に支持が偏った状態が生じてしまうことだ。 一昨年の「郵政総選挙」はその悪例の一つだった。人々は、「郵政民営化」の内容もよく理解せず、「抵抗勢力」を相手に戦うコイズミに熱狂した。その「カイカク」が幻想であったことを悟るのに、コイズミが首相になった頃から数えて実に6年を要した。安倍晋三は90年代前半以降コイズミ政権成立までの10年を「失われた10年」と称しているが、これは誤りである。経済危機を新自由主義的手法で乗り切ろうとした1997年以降、小渕、森、コイズミ、安倍と政権が変わるたびに政治家の質がどうしようもなく劣化していった現在までの10年間こそが「失われた10年」であったことを国民は共通認識とすべきである。 時の為政者