<「予算組めない」> 2005年12月8日、福島県双葉町役場。初登庁した井戸川克隆町長は、総務課長の言葉に耳を疑った。 「町長、来年度の予算が組めません」 福島第1原発5、6号機を抱える町には、立地に伴う多額の交付金や固定資産税が入っていたはず。それなのに町の借入金残高は、一般会計の1.5倍に当たる86億円に膨れ上がっていた。 人件費削減に加え、町発注工事の積算見直しや事業の先送りなど、町は「乾いた雑巾を絞る」(井戸川町長)ような緊縮財政に転換せざるを得なくなった。 原因は「捕らぬタヌキ」式の財政運営だった。第1原発7、8号機の増設に伴う税収増を、借入金の償還財源に当て込んでいたのだ。町職員の1人は「増設すれば財政問題は解消すると、大半の職員が楽観視していた」と言う。 ところが、増設計画は東京電力の原発トラブル隠しの発覚(02年)を受けて凍結。その後も事故隠しやデータ改ざんなど