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ブックマーク / traindusoir.hatenablog.jp (40)

  • 雇用政策のジレンマ - 備忘録

    ※追記および関連エントリーを追加しました。(12/03/11) ここにいう「ジレンマ」とは、通常、雇用情勢がよくなること、例えば、求人数が増加すれば、雇用政策の執行はより容易になると考えるのが自然であるが、逆に、雇用情勢がよくなることによって、雇用政策の執行がより困難になる側面もある、ということを意図している。ブログは、とりわけ経済や雇用の問題に関心のある方に読んでいただく傾向があるので、これまで、ちまたの議論ではあまり指摘されることのなかったこの問題について取り上げる。 2008年秋の金融危機に端を発する需要の大幅な縮小により、雇用情勢は急速に悪化したが、麻生自民党政権(当時)は、これまでにない規模の雇用対策を発動した。これらを簡単にカテゴライズして整理すると、つぎのようになる。 雇用調整助成金などを活用した企業の雇用維持の支援 基金を活用した自治体による一時的な雇用機会の創出 雇用保

    雇用政策のジレンマ - 備忘録
  • アダム・スミスの幸福観──堂目卓生『アダム・スミス 『道徳感情論』と『国富論』の世界』 - 備忘録

    アダム・スミス―『道徳感情論』と『国富論』の世界 (中公新書) 作者: 堂目卓生出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2008/03/01メディア: 新書購入: 8人 クリック: 169回この商品を含むブログ (114件) を見る 書において著者は、アダム・スミスの幸福観に関し、つぎのように述べる。まず、スミスにとっての幸福とは、心が平静なことであるとし、この点において、ストア哲学の幸福観の影響を認める。しかし、幸福と財産との関係については異なる見方がとられ、スミスにとって、幸福であるためには、「健康で、負債がなく、良心にやましいことがない」こと、特に、その社会における「最低水準の富」を保持していることが必要であり、「最低水準の富」がないと、人間は悲惨な状態に陥るとする。 一方、ストア哲学では、賢人とは、あらゆる状態において精神の不動を保つ人である。この点はスミスの見方とは異なってお

    アダム・スミスの幸福観──堂目卓生『アダム・スミス 『道徳感情論』と『国富論』の世界』 - 備忘録
  • 所得と自殺率の相関性(補足) - 備忘録

    前回のエントリーでは、都道府県別のクロスセクション・データによって、所得水準と自殺率の間に相関性があることを確認した。ただし、この分析では、高齢化率が所得水準と自殺率の双方に関係をもっているため、見かけ上、所得水準と自殺率の間に相関性が生じている可能性を排除することができない。すなわち、高齢化が進んでいる都道府県ほど就業率が低下しており、消費の停滞と物価・所得の下落が大きくなるとともに、健康不安がより高まることで自殺率も上昇する、といった説明の仕方も可能である。今回は、都道府県別に異なる高齢化の水準を調整した自殺率を推計し、これと所得水準との相関関係を確認することで、上述のような指摘の可能性に一定の回答を与えることを試みる。 まず、都道府県別自殺率を20〜29歳、30〜39歳、40〜49歳、50〜59歳、60〜69歳の各年齢層別に計算する。使用したデータは、内閣府『平成21年地域における自

    所得と自殺率の相関性(補足) - 備忘録
  • 東北6県の所得の低下と自殺率 - 備忘録

    デフレは、物価と所得が相互に関係することで、名目所得の低下と強く関係するが、名目所得の低下は、必ずしも全国で一律的に生じているわけではなく、地域ごとに、その度合いには違いがある。試みに、東北6県と全国の名目所得(マクロの雇用者報酬)の推移をみると、つぎのようになる。なお、これは県民経済計算の雇用者報酬をみたものであり、現在のところ、2008年まで推計されている。このため、グラフでは、経済危機直後までの動きを表している。 全国では、景気の回復にともない、2005年を境として所得は上昇に転じ、おおくの県は、これと同様に推移している。しかし、秋田および岩手の2県では、景気拡張期にあっても名目所得は低下しており、経済危機によって、その低下は一段と大きなものとなっている。 ただし、マクロの名目所得は、雇用者1人あたりの所得に加え、雇用者数の影響も受ける。実際、秋田では、この間、雇用者数が大きく減少し

    東北6県の所得の低下と自殺率 - 備忘録
  • 坂東眞理子、辰巳渚(編著)『ワークライフバランス 今日から変われる入門講座』 - 備忘録

    ワークライフバランス 今日から変われる入門講座 (朝日新書) 作者: 坂東眞理子,辰巳渚出版社/メーカー: 朝日新聞出版発売日: 2008/10/10メディア: 新書 クリック: 27回この商品を含むブログ (12件) を見る ワークライフバランスという言葉は多義的である。書は、それぞれ専門分野をもつ女性の執筆者によるものだが、その内容は、暮らし方、心や体の健康、考え方、働き方について「整える」という観点から執筆されている。これらのどこがワークライフバランスに関係するのか、よくわからないと思う人もいるだろうし、自分も少なからずそう感じるところがある。 例えば、書の冒頭にも取り上げられている政府の取り組みとして、政労使の合意の下策定された『仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章』をあげることができる。この憲章では、人々の働き方に関する意識や環境が社会経済構造の変化に必ずしも適応

    坂東眞理子、辰巳渚(編著)『ワークライフバランス 今日から変われる入門講座』 - 備忘録
    microtesto
    microtesto 2010/11/23
    この間の労働投入量の減少は、主として労働時間の二極化、いいかえれば、非正規雇用者が増加したことで平均労働時間が減少したことによって達成されている
  • 四半期別GDP速報 - 備忘録

    昨日、四半期別GDP速報が公表されましたので、いつものグラフを3点セットでみていきます。今回は米国から。 米国経済は、貨幣経済面からみれば堅調に回復しており、デフレ懸念も概ねおさまりつつありますが、雇用の回復ができていません。実質経済成長率をみると、純輸出の寄与度の減少が引き続き大きく、投資デフレーターがマイナスとなるなど、経済の実物的側面の回復は抑制されています。これらの点から、昨今のFRBは、通貨を切り下げ輸出入のバランスをとることで、需要の増加を図ることに力点をおいているようにも感じます。 つぎに日です。 日経済は、貨幣経済面からみると、2000年代初頭よりも一段と低い水準でデフレが継続しています。一方実質経済成長率は上昇しましたが、これについては、「猛暑需要とエコカーなどの政策効果の駆込みやエコポイントを含む需要の先いにより高い成長率を記録」(官庁エコノミストのブログ)*1し

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  • 「仕事を豊かに生む景気回復」とILOによる政策効果分析 - 備忘録

    4月20〜21日にワシントンD.CにおいてG20労働・雇用担当大臣会合が開催されました。このときに、ILO(国際労働機関)が提出したレポート"Accelerating a job-rich recovery in G20 countries: Building on experience" を読む機会がありましたので、少し内容を紹介します。 なお、このレポートを含むG20会合に関するILOの文書は、下のサイトを参照してください。 http://www.ilo.org/global/About_the_ILO/Media_and_public_information/Press_releases/lang--en/WCMS_126202/index.htm 2008年の第4四半期に、おおくの国で実質GDPが低下しました。一方、これと比較した完全失業率の悪化の程度は、国によってさまざまです。

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  • 阿部彩「子どもの貧困──日本の不公平を考える」 - 備忘録

    ※文章・注記を若干修正しました。(12/02/09) 子どもの貧困―日の不公平を考える (岩波新書) 作者: 阿部彩出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2008/11/20メディア: 新書購入: 16人 クリック: 218回この商品を含むブログ (110件) を見る 日貧困率(相対的貧困率)は、OECD加盟国の中で上位に属し、なかでも働いている層の貧困率が高いことは、2006年のOECD ”Economic Survey of Japan ”の公表以来、よく知られるようになった。また政府も、今年、相対的貧困率の推計結果を公表し、貧困率が上昇傾向にあることを改めて確認している。 http://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/10/dl/h1020-3a.pdf貧困大国」といったセンセーショナルなタイトルも時折みかける。 書では、特に、子どもの貧困率の実態と

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  • 山森亮「ベーシック・インカム入門 無条件給付の基本所得を考える」 - 備忘録

    ベーシック・インカム入門 (光文社新書) 作者: 山森亮出版社/メーカー: 光文社発売日: 2009/02/17メディア: 新書購入: 24人 クリック: 276回この商品を含むブログ (127件) を見る このところ、ベーシック・インカムという言葉をよく聞くようになった。その意味するものは幅広く、論者によってニュアンスの違いもあるのだろうが、一般的には、すべての人に対し、その所得や世帯構成などの違いに関わりなく、無条件に給付される生活の必要に足るだけの所得、といったように考えられるだろう。(なお、書で「ベーシック・インカム」として取り上げられている対象はより広く、M・フリードマンらが提唱したいわゆる「負の所得税」なども含まれている。) ベーシック・インカムは、単に研究対象として、あるいは各種の活動において要求されただけのものではなく、米国や英国などでは一部に実現されており、日において

  • 子育て世帯に対する子ども手当の支給は、少子化対策の正攻法ではない - 備忘録

    ※id:ari_satoさんのエントリーにコメントしました。また、ブックマーク等で子ども手当が第2・3子の出産支援に役立つとのコメントがみられますが、2000年から2005年の間の有配偶女性の産む子供の数が増加した要因(0.05)のうち、第2子の寄与は0.02、第3子以降の寄与は▲0.01であり、これらの合計はやはり増加寄与になります。(09/09/25) 合計特殊出生率とは、一般に、一人の女性が一生に産む子供の数、という定義で知られている。しかし実際には、15〜49歳の女性について年齢ごとに1年間の出生率を求め、それを合計した「期間合計特殊出生率」の数値が広く流通している。 日の合計特殊出生率は、上図のように1970年代以来下がり続けているが、その低下の要因についてさまざまな場面で語られているものの、常にその議論は忘れ去られているような気がする。最近でも、民主党の子ども手当と少子化問題

    子育て世帯に対する子ども手当の支給は、少子化対策の正攻法ではない - 備忘録
  • 「デフレ」の意味するもの、あるいは経済の実需的側面と貨幣的側面 - 備忘録

    前回の続きです。*1ブックマークに指摘されていますが、国内需要デフレーターがマイナスになっただけではデフレと「定義付ける」ことはできないというのはそのとおりで、継続的な物価の下落(あるいは、それにともなう景気の後退)があって、はじめてデフレとよぶことが可能になるといえるでしょう。その意味では、前回の表題はやや時期尚早感があります(むろん、自分はいずれそうなるだろうことを見込んでおりますが)。また、継続的な物価の下落が将来にわたって見込まれること、いいかえれば、期待物価上昇率が低下しているかどうかが今後の金融政策運営を判断する上で重要なポイントであることも、いうまでもないことです。 これに加え、関係者限定のmixiにおいてもさる方からご指摘を受けました。こちらはやや質的な議論となっており、デフレを「定義付ける」上で参照にすべきなのは国内需要デフレーターではなくGDPデフレーターではないか、

    「デフレ」の意味するもの、あるいは経済の実需的側面と貨幣的側面 - 備忘録
  • (号外)米国経済は事実上のデフレに突入 - 備忘録

    先月31日に米国の2009年4〜6月期GDPが公表されました。市場の予想を上回る水準となったことが、世間の好印象につながっているようです。 http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00160189.html ところが、GDPデフレーターはプラスが維持されているものの、輸出入の寄与を除いた国内需要ベースでみると、ついにマイナスです。完全失業率は9.5%ですが、物価が今後も下落基調*1であれば、しばらくは悪化が続くことになります。*2 貨幣流通速度の低下傾向も変わっておらず、今後も継続的な金融緩和が必要な状況です。出口戦略を話題にするのは、まだ先のことでしょう。 なお、日の完全失業率は5.4%、真の失業率(12カ月移動平均)は5.0%です。 *1:ただし、コア・インフレ率は、1%台後半を維持。 *2:ほかに、こちらも参照:htt

    (号外)米国経済は事実上のデフレに突入 - 備忘録
  • ジョセフ・スティグリッツ「倫理的なエコノミスト」(2) - 備忘録

    (前回のエントリー) ジョセフ・スティグリッツ「倫理的なエコノミスト」(1) 下記の書評翻訳の続きです。*1 ジョセフ・スティグリッツ「倫理的なエコノミスト」(Foreign Affairs 11-12/2005) 半歩の前進と躓き グローバリゼーションの貧困への衝撃に関する議論において、フリードマンは、たとえグローバリゼーションが国内の不平等の拡大と結びついてきたとしても、グローバルには貧困と不平等の削減につながる、との見方を支えてきた。その分析には3つの不備がある。第1は、貧困の定義に関係する。世界銀行が様々な観点から強調しているように、貧困は単に所得の問題ではなく、不安定と声を出すことができないことも、その要素の一部にある。フリードマンの分析は、完全に、これらの次元を無視している。 第2の批判は、何がグローバリズム来の問題とはいえず、特別な政策にともなわれたものなのか、という点に関

    ジョセフ・スティグリッツ「倫理的なエコノミスト」(2) - 備忘録
  • ジョセフ・スティグリッツ「倫理的なエコノミスト」(1) - 備忘録

    ※コメントいただいた点について、随時修正を行います。 いま、猪木武徳「戦後世界経済史」を読んでいるのですが、はしがきに次のような記述がありました。 滞っていた書の執筆に踏み切れたのは、中央公論新社の新書編集部の高橋真理子さんに「構成目次」をお渡ししてから七年の歳月が流れてしまったことにわれながら驚いたこと、昨年秋に偶然手にした米国の経済学者、ベンジャミン・フリードマン(Benjamin F.Friedman)のThe Moral Consequence of Economic Growth(Alfred A.Knopf, 2005)を読んで大きな刺激を受けたことが影響した。同書は、今時の金融危機の発生以前に書かれているが、経済成長とモラルの関係を取り上げており、経済学が、法学や倫理学、道徳哲学から枝分かれした学問であることを改めて想い起こさせてくれた。 戦後世界経済史―自由と平等の視点か

    ジョセフ・スティグリッツ「倫理的なエコノミスト」(1) - 備忘録
  • 日本の雇用システムの柔軟性とその弊害 - 備忘録

    ※追記を追加しました。(09/06/10) 先日のエントリーに関連して─というか、「チンピラ」(爆)のことは無視して─日の雇用システムについて、もっとまじめに考えてみることにしましょう。先日も紹介した大内伸哉「雇用はなぜ壊れたのか」から、別の一節を以下に引用します。 しかし、こうした給料の引き下げは、法的にはそれほど簡単なことではない。すでにある給料システムを変更するためには、原則として、個々の社員の同意が必要であるし(労働契約法8条)、就業規則という労働条件を統一的に定めている規則を変更することにより給料を一括して引き下げる場合には、厳格な要件(合理性)を充たさなければならないからである(同法第10条)。 このように給料による調整が困難である以上、解雇まで厳格に規制するのは経済合理性に合わないともいえる。しかし、現在の法的ルールでは、経営上の必要性がある場合の解雇(整理解雇)であっても

  • いまあえて、完全失業率がそれほど悪化しない可能性を考えてみる - 備忘録

    雇用情勢については、昨年末からの実質GDPの急激な低下と、それがV字型に急回復する可能性が低いことを受け、2009年度以降、急速に悪化することが予測されています。この点については、3月末の経済財政諮問会議における岩田一政議員の「どう考えても7%程度に上がっていく」という発言が注目を集めました。*1こうしたことから、完全失業率が既往最高水準にまで悪化することを防ぐため、政府においても、新たな経済対策が策定されたようです。 http://ameblo.jp/nakagawahidenao/entry-10240020696.html その一方で、これまでのところ、完全失業率の悪化は限定的なものとなっています(2009年2月で4.4%、既往最高水準は2002年6月等の5.5%)。生産関数アプローチから短期的に考えれば、有効需要の低下に応じて雇用量は調整されるので、完全失業率は今後急速に悪化するこ

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  • デヴィッド・マースデン「雇用システムの理論 社会的多様性の比較制度分析」(3) - 備忘録

    雇用システムの理論―社会的多様性の比較制度分析 作者: デヴィッドマースデン,David Marsden,宮光晴,久保克行出版社/メーカー: NTT出版発売日: 2007/05メディア: 単行購入: 3人 クリック: 62回この商品を含むブログ (10件) を見る (過去のエントリー) デヴィッド・マースデン「雇用システムの理論 社会的多様性の比較制度分析」(1) デヴィッド・マースデン「雇用システムの理論 社会的多様性の比較制度分析」(2)──市場と商品 内部労働市場についての一般的な理解 前節では、労働市場という概念について考えてみた。労働市場は、生産に用いられる要素である労働を効率的に配分する機能を持ち、そこでは、その時点における労働の価値が「公正」に評価される。しかし、労働市場で評価されるのは、あくまでその時点における労働の価値である。労働力を再生産する過程で要する費用(生計費

    デヴィッド・マースデン「雇用システムの理論 社会的多様性の比較制度分析」(3) - 備忘録
  • デヴィッド・マースデン「雇用システムの理論 社会的多様性の比較制度分析」(2) - 備忘録

    雇用システムの理論―社会的多様性の比較制度分析 作者: デヴィッドマースデン,David Marsden,宮光晴,久保克行出版社/メーカー: NTT出版発売日: 2007/05メディア: 単行購入: 3人 クリック: 62回この商品を含むブログ (10件) を見る ※付注を追加しました(02/09/09)。 (過去のエントリー) デヴィッド・マースデン「雇用システムの理論 社会的多様性の比較制度分析」(1) 市場と商品 日の雇用慣行を考えるときに(あるいは、日だけに限られるものではないのかも知れないが)欠かすことのできないキーワードに「内部労働市場」というものがある。内部労働市場とは何を意味するのかを検討する前に、まずは、「市場」とは何かについて、よりつきつめて考えておく必要があろう。市場とは、「商品」が交換(ないし、売買)される「場」が抽象化された概念である。ここでいう商品とは、

    デヴィッド・マースデン「雇用システムの理論 社会的多様性の比較制度分析」(2) - 備忘録
  • デヴィッド・マースデン「雇用システムの理論 社会的多様性の比較制度分析」(1) - 備忘録

    雇用システムの理論―社会的多様性の比較制度分析 作者: デヴィッドマースデン,David Marsden,宮光晴,久保克行出版社/メーカー: NTT出版発売日: 2007/05メディア: 単行購入: 3人 クリック: 62回この商品を含むブログ (10件) を見る 周知の事実であるが、企業の人事管理制度や給与の仕組みは、国や社会によってさまざまなものがある。こうした多様性を充分に考慮しない提言や論考は、現実の社会において、その効率性や安定性を損なうことになることはいうまでもない。例えば、経済学の理論では、労働者が受け取る報酬は、その労働の限界生産力 によって決まってくる。実際には、賃金や価格には粘着性があり、労働者の受け取る報酬が限界生産力によって即時に調整されるわけではいないことは、その理論を扱っている経済学者を含めて誰もが知っている。しかし、そうしたことだけではなく、そもそも労働者

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  • 野口旭編著「経済政策形成の研究 既得観念と経済学の相克」 - 備忘録

    経済政策形成の研究―既得観念と経済学の相克 作者: 野口旭,浜田宏一,若田部昌澄,中村宗悦,田中秀臣,浅田統一郎,松尾匡出版社/メーカー: ナカニシヤ出版発売日: 2007/09メディア: 単行購入: 2人 クリック: 40回この商品を含むブログ (40件) を見る 書の内容 書の目的は、その序章に明示されるように「経済政策はどうあるべきかにではなく、あるべき政策を実現させるには何が必要か」にある。第1章では、経済政策の選択における観念(認識モデル)の役割と、時に(客観的な)利害の対立よりも観念の対立が政策の遂行に影響を与えることが指摘される。人々の観念は一定の慣性を持ち、その背景には「認知的不協和」や支配的な認識モデル(パラダイム)の持つ強い規範性がある。第2章では、経済政策の形成における知識の役割が更に考察される。カプランによれば、普通の人々の間には「系統的な認知バイアス」が存在

    野口旭編著「経済政策形成の研究 既得観念と経済学の相克」 - 備忘録