経営学の泰斗、ヘンリー・ミンツバーグ教授が、久しぶりの日本訪問で感じたことは、「失われた10年、20年はどこにあるのか」ということだった。はたして、経済がすべてなのか。社会的にバランスを欠いてはいないか。P.F.ドラッカー、アルフレッド・チャンドラー亡き後、広く深い教養と大局観を備えた数少ない貴重な存在であるミンツバーグ教授によるエッセイ、第2回(第1回はこちら)。 失われた日々をアメリカで過ごす 日本からモントリオールに戻る途中、私はサンフランシスコに立ち寄った。そこでは、これまで通りの日常が待っていた。 予約した普通のホテルのちっぽけな部屋は300ドル以上するもので、フロントから「ちょうど今、市内でイベントが開催されているのです」と告げられた。まるで「この国では市場で受け入れられる限り高い金額を請求し、顧客から搾取します」と言っているかのようだった。部屋のトイレの便座さえ持ち上がらなか