2015年度の「ふるさと納税」の寄付額は1650億円余りとなった。これは14年度の4倍以上、制度の始まった08年度の約20倍にのぼる。ふるさと納税の理念は「応援したい自治体へのサポート」だ。寄付の使途・事業などを指定できることから、自治体が国民に取り組みをアピールする契機になることが期待されてきた。しかし実態はこの理念からかけ離れている。 東日本大震災や熊本地震、糸魚川大火などの災害で、ふるさと納税は被災自治体を支援する役割を果たした。しかし平時には、自治体は手厚い返礼品で寄付の獲得を図り、寄付する側も応援したい地域ではなく、好みの特産物が返礼される地域を寄付先に選んでいる。ふるさと納税は寄付ではなく、国が支援する「官製通販」の性格が濃い。 ◆◆◆ なぜこうした事態に至ったのだろうか。その背景にはふるさと納税の仕組みがある。 ふるさと納税を利用する個人は寄付額から2000円を差し引いた金額