闘病2年 力尽きる ■線量 法定の5分の1 相模湾を望む神奈川県横須賀市の郊外。嶋橋さんの遺影が見つめる居間で、母美智子さん(62)は、息子の死亡診断書をそっと机に広げた。死因の欄には「慢性骨髄性白血病」。初診時の白血球数は、正常値の数倍の「二~三万」、嶋橋さんには、別の病名を告げたとも記されていた。 美智子さんが長男の病名を知らされたのは、一九八九年十一月。当時暮らしていた浜岡町の町立浜岡総合病院で検査を受けた後、紹介された浜松医科大医学部付属病院(静岡県浜松市)でだった。 「白血病と言われてもピンとこなかった。血液のがん、あと数年の命かも、と聞かされて、頭の中が真っ白になった。まだ若いのに、そんなばかなって。病院からどうやって家にたどり着いたのか覚えていない」 ◆ 嶋橋さんは八一年春、横須賀市内の工業高校を卒業後、横浜市の建設会社(現在は本社東京)に就職した。中部電力(名古屋市)の原発
福島第一原発事故で、放射能汚染が原発から北西方向を中心に広がると、原発2号機が破損した当日の3月15日時点で政府は予測していた。この方向にある福島県飯舘村など5市町村の住民に避難を求めると、政府が発表したのは4月11日で、結果として対応は後手に回った。 文部科学省と原子力安全・保安院が5月3日夜から公開を始めた「緊急時迅速放射能影響予測システム(SPEEDI)」の試算結果からわかった。 3月15日午前6時すぎに原発2号機の圧力抑制室が破損。約3時間後に正門付近で、放射線量が1時間あたり10ミリシーベルト超まで急上昇した。保安院は破損の影響を調べるため、同日午前7時前に試算した。 それによると、同日午前9時から24時間後までの間に、原発を中心にした単純な同心円状ではなく、とくに北西方向に汚染が流れていくことが予測された。こうした汚染の傾向は、福島大などによる実測値でも裏付けられている。
東日本大震災に伴う東京電力福島第1原子力発電所の事故を機に、原発をめぐる特定の文書がインターネット上に拡散している。原発の元技術者が危険性を訴えた講演をまとめた文書で、事故後、ブログへの転載が急増した。さながら反原発の“バイブル”と化しているが、原発に詳しい専門家らは「一見して正確性に欠ける。不安をあおっているだけ」と批判、正しい情報の選別を訴えている。 文書のタイトルは「原発がどんなものか知ってほしい」。昭和40~60年代に一級配管技能士として原発で勤務経験があり、各地の原発運転差し止め訴訟にもかかわった故・平井憲夫さん(平成9年死去)が行った講演を市民団体がまとめた。A4版23枚、約2万字にも及ぶ。7年の出版後、少なくとも12年ごろにはネット上に流出したという。 文書は20章から成り、いずれも原発の危険性を誇張した内容が目立つ。事実と異なる情報も多く、《素人が造る原発》という章では「事
性的暴行:「前歴者の去勢法案は望ましくない」 国家人権委が反対意見 再犯の危険性が高いとされる、児童や青少年を対象とした性的暴行の前歴者に対し「外科的な去勢」を行うという内容の法案について、国家人権委員会(以下、人権委)が「導入は望ましくない」との意見を国会議長に伝える方針を固めた。外科的な去勢とは、性的な衝動を引き起こすホルモン「テストステロン」を生成する男性の睾丸(こうがん)を除去することをいう。テストステロンの分泌を抑える薬物を定期的に投与する「化学的な去勢」よりも厳しい措置といえる。 人権委は、与党ハンナラ党の申相珍(シン・サンジン)議員が今年1月に発議した「児童に対する性的暴行前歴者の外科的治療に関する法律案」と、刑法の一部を改正する法律案について、国会法制司法委員会の求めに応じ、人権侵害の余地の有無について検討した結果、冒頭のような結論を下した、と3日発表した。 申議員が発議し
「福島県内の学校等の校舎、校庭等の利用判断における 暫定的考え方」に対する技術的助言について 日 時:平成23年4月19日(火) 場 所:内閣府原子力安全委員会原子力安全委員長室 出席者:班目原子力安全委員会委員長、久木田委員長代理、久住委員、 代谷委員、(小山田委員は福島第一原子力発電所派遣中) 事務局 加藤審議官、都筑管理環境課長 概 要: 本件については、文部科学省から事前相談があった4月9日以降、 文部科学省との数回にわたる打合せ、原子力安全委員等において逐次 行われた議論を踏まえてまとめた原子力安全委員会として重視すべき 点(※)について、コンセンサスが形成されていた。 ※原子力安全委員会が重視すべき点 ・非常事態収束後の参考レベル 1~20mSv/年を適用することは差し 支えないが、さらに、ALARA(合理的に達成可能な限り低く)の 観点から被ばくの低減化を求める。 ・種々の
福島県内の幼稚園や学校などでの屋外活動を制限する放射線量が「年間20ミリシーベルト」を前提に決められた問題で、政府と東京電力の事故対策統合本部(本部長・菅直人首相)は2日、内閣府原子力安全委員会がこれを妥当と認める助言をした経緯を文書で公表した。安全委は正式な委員会を開かず議事録もなかったため「透明性に欠ける」などと批判されていた。 それによると4月9日に文部科学省から安全委に相談があり、数人の委員や専門委員、事務局を交えて4回会合を開いた。その結果▽被ばくの低減化を求める▽モニタリング(監視)の確実な実施--などを条件に「年間20ミリシーベルト」を容認する方向で事実上合意した。 政府は同19日14時8分、正式に助言を要請。これを受け、当時東京にいた班目(まだらめ)春樹委員長ら4人の委員と事務局が集まった。福島にいた委員1人に電話で了解を得たうえで、約2時間後、助言を政府側に送ったという。
「辞任というのは、最悪の行動じゃないでしょうか」 先週末、同僚から届いたメールの一文だ。内閣官房参与だった小佐古敏荘・東京大教授の話題だ。小佐古さんは、放射線の健康影響の専門家。その人が「政府の対応は甘すぎる」と訴え、泣きながら会見した。原発事故の地元では、ただでさえ放射性物質への不安が高まっている。小佐古さんの辞任劇は「あまりに感情的で唐突な行動のため、混乱に拍車をかける」というのだ。 放射性物質の健康影響には、2種類ある。強い放射線で体の組織が傷つく確定的影響と、被ばくによって染色体が傷つき、将来がんになるリスクが高まる確率的影響だ。原発から数十キロ離れれば、確定的影響が起きる線量より大幅に低く、「ただちに影響はない」との説明になる。一方、将来のがんリスクは、被ばく量が少なくても、わずかに高まるとされる。中でも、子どもは放射性物質の影響を受けやすい。福島県の親たちが心配するのは、その点
仙台市の南約25キロ、なだらかな山に囲まれた宮城県柴田町。精神科「仙南中央病院」は3月11日、激しい揺れで柱が折れ、病棟の照明が一斉に消えた。 重度認知症などで入院する94人を付属の体育館に避難させた。1回の食事はおにぎり1個。患者は空腹と寒さで悲鳴を上げた。 電話は断たれ、町役場は機能不全に陥っていた。「どうやってSOSを出せばいいのか」。食料がほぼ尽きた14日、鈴木健院長(37)は携帯電話を手に取り、インターネット掲示板に書き込んだ。 「餓死寸前。食料、医薬品、燃料至急求む」 書き込みはネットで転載され、瞬く間に広まった。15日から物資を積んだトラックが次々と乗り付けた。 ところが前後してネット上で批判があふれ始めた。「深刻な状況ではない。悪質なデマ」「いい加減にしろ」。書き込みの転載が止まらなかったからだ。 鈴木院長の思いは複雑だ。「ネットのおかげで患者は生き延びた。同時
災害派遣の本務化へ――大震災と自衛隊(1) 2011年4月18日 「災害派遣」の垂れ幕を付けたジープ(1/2tトラック)を先頭に、73式中型・大型トラックや救急車など20両あまりが水没している。第22普通科連隊(宮城県多賀城駐屯地)の災害派遣部隊が営庭で車列を組んだところに津波がやってきた(『産経新聞』3月28日付1面)。この連隊は、15時18分に災害派遣準備に入った(同連隊ホームページ参照)。「天変地変その他の災害」の場合、「特に緊急を要(する)」ときは、知事の災害派遣要請を待たずに部隊等を派遣できる(83条2項但し書)。阪神・淡路大震災(以下、「阪神」と略す)の際、要請の「遅れ」が問題となり、その後、「震度5弱以上」の場合、「自主派遣」という形で初動が早められていた。同連隊も定められた通りの行動をとったわけだが、津波の来襲は予想外だったのだろう。それでも、写真を見ると、地震後わずかな時
憲法記念日の3日、大牟田市不知火町の大牟田文化会館で「激動の世界と憲法九条」と題した講演会があった。護憲団体「九条の会・おおむた」の主催で、約400人が参加した。【近藤聡司】 憲法学専門の水島朝穂・早稲田大学法学学術院教授が講師を務め、軍事問題や東日本大震災の影響と絡めた視点で護憲の意義を語った。 水島教授は4月27~30日、東日本大震災で被災した東北3県を視察。現地で取材した自衛隊の支援活動を評価する一方、メディアなどが米軍のトモダチ作戦を評価することに異論を述べた。 水島教授は、憲法9条の規定で「日本は集団的自衛権を行使できない」と強調。「米軍は遺体捜索と同時に上陸作戦の演習をやったのではないか。トモダチ作戦を『日米同盟の深化』などと言うと『次は自衛隊が米軍を助ける番だ』との議論が出てくる」と訴えた。 震災後に憲法を改正して緊急事態の条項を入れるべきだとの意見が出ていることを「課題への
東日本大震災やそれに付随して起きた東京電力原発事故で、日本国憲法第25条を国が遵守することが問われていることはいうまでもない。日本国憲法第25条は下記の通り。 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。 今年の憲法記念日では、例年以上に憲法25条に焦点を当てた議論がなされると思っていた。朝日新聞は、前主筆船橋洋一の退任後、若宮啓文が主筆に就任して、昨日(5月2日)の1面トップから3面に続く「復興へ 生存権こそ」という見出しの記事を掲げたから、憲法記念日にはどんな紙面になるか注目していた。 しかし、朝日新聞もまた船橋洋一がつけた慣性力で動いているようだ。ここ数年の紙面と比較しても、さらに憲法記念日らしからぬ紙面だった。憲法の記事は前日に書いたからもういいだろ、といわんばかり
■「自衛隊は国民の軍隊」明記を 憲法施行から64年を迎えたいま、戦後日本の国のありようが根幹から問われている。 東日本大震災による死者・行方不明者は2万5千人を超えており、国家が国民の生命・財産を守る責務を果たしていないことをみせつけた。その大きな要因は、「想定外」は考えなくてよい、として非常時への備えを欠落させてきたことなどによる。 現行憲法の非常時規定は、衆院解散中、「国に緊急の必要」があるときは参院の緊急集会を開催できるとしているだけだ。これでは国家として緊急事態に適切に対処することはかなわない。憲法を含め、国家緊急事態に関する不備の是正が喫緊の課題である。 ≪突破口は憲法96条改正≫ 同時に、菅直人首相が緊急時の規定を使おうとしなかったことも、事態をより深刻にしていることを指摘しておきたい。 今回の震災でもわかるように、非常時に頼りになるのは自衛隊などだ。自衛隊の奮闘は国民の目に焼
非常時への対応 本来なら憲法の見直しが要る(5月4日付・読売社説) ◆国会の機能不全は放置できない◆ 巨大な地震と津波、そして原子力発電所事故。かつてない国難に直面すると、国家の基本である憲法の在りように思いを致さざるをえない。 施行から65年目を迎えた憲法の姿を、震災への対応という観点から考えてみたい。 問題の一つは、現行憲法が、緊急事態への対処を規定する条文を欠いていることだ。 国の緊急事態としては、今回のような大規模災害や、原発事故だけでなく、外国からの侵略、テロも想定される。 ◆各国には対処条項が◆ 政府には、こうした重大な局面で迅速、適切に対処することが求められる。主要国の多くの憲法に緊急事態条項があり、対処の原則を定めているのはこのためだ。 居住や移転の自由、財産権など基本的人権が、その場限りの超法規的な措置によって侵害されるのを防止する目的もある。 政府は今回、災害対策基本法
統一地方選後半戦が終わった。国民は再び菅直人政権に対して、「ノー」という強い意思を示した。内閣支持率も危険水域である20%前半に戻った。東日本大震災や福島第1原発事故の対応があり、「政権を代える余裕はない」という空気があるにもかかわらず、この審判は重い。 そもそも、震災発生から1カ月半になるが、菅政権の対応はお粗末というしかない。 原発事故について、菅政権は「東京電力の責任」という姿勢だが、これはおかしい。政府は震災当日(3月11日)、原子力対策特別措置法に基づき「原子力緊急事態宣言」を発令した。首相に、原子力事業者に指示・命令できる強い権限を与える宣言であり、当然、権限には責任が伴う。 菅首相は「すべての責任は自分が取る」「事態収拾に全力を尽くしてくれ」と指示すべきなのだ。ところが、漏れてくるのは、閣僚や官僚、東電幹部を怒鳴り散らかしている話ばかり。菅首相はJCO臨界事故の教訓からできた
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