ゲーデルの不完全性定理をご存知でしょうか。前世紀に発見された数学の定理の中で、抜群の知名度を誇り、コンピューターのひな形となるチューリングマシンの創案にも大きな影響を与えたと言われています。この定理は、「不完全」「無矛盾」「決定不能」など思想的な響きをもつ言葉で表され、一見哲学的な印象を与えています。しかし、定理自体はあくまで数学の命題です。数学的論理で証明されていることを念頭に置き、周辺の関連項目・話題にも触れながら、この奥深い数理論理の世界を探検してみましょう。 アリストテレス以来 最も偉大な論理学者といわれる。 クルト・ゲーデル【 1906 - 1978 】 オーストリア・ハンガリー帝国(現チェコ)に生まれ、アメリカに移住した数学者。ウィーン大学で数学と物理を学んだ。1930年に学位論文として1階論理の完全性定理を発表後、1931年には、自然数の体系での決定不能な命題の存在を証明する