かつての松本人志がどれほどの影響力を持っていたのかを理解する上で、彼の著書である『遺書』は欠かすことの出来ない最大の参考資料といえるだろう。放送作家の藤本義一を名指しで批判し、観客の質が悪いから『笑っていいとも!』を降りたと告白し、ダウンタウンを否定した横山やすしを「殴っといたらよかった」と言い切ってしまう危なっかしさは、出版から10年以上が経過した今読んでいても冷汗モノだ。 そんな『遺書』の中でも、特に強い印象を残すのが、松本自身の芸について書かれたコラムである。当時、「ある人物が「ダウンタウンには芸がない!」と言っていた」と書かれたハガキを受け取ったという松本。一読し「ムッ」ときたが、思い直し、確かにそうかもしれないと気持ちを落ち着けたのだという。その理由について、松本は彼自身も大好きだという喜劇役者・藤山寛美を例に挙げて、次の様に書いていた。 オレは確かに、この人に比べたら芸はない。