村上春樹という作家をめぐる、ユーモアとオリジナリティ。その魅力とは── ※本稿は、「KAI-YOU.net」にて2017年に掲載された原稿を再構成したもの 小説とはたとえるならば「家」のようなもので、一階にはエントランスやロビーなどのひとびとが集う場所がある。二階にはリビングや個室などのプライベートな空間があって、小説というのはそういう建築物だ。 しかし、家には暗く、光のささない暗い地下室がある。そこにはその家で暮らすひとびとにすら忘れ去られてしまったがらくたや古い記憶が雑多に放置されている。 地下に潜らなくても小説は成立するけれど、しかし名作と呼ばれる作品はかならずこの地下室をちいさな光を頼りに潜っていく。村上春樹の公開インタビュー「魂を観る、魂を書く」より筆者覚え書き 村上春樹がこのようなことを言っていたのを、2013年、京都大学で行われた講演会「魂を観る、魂を書く」で私は聞いた。 こ