『図書館巡礼』は、書物と図書館について四方山話を集めた一冊だ。「本」を追い求める営みが真摯で、ひたむきであればあるほど、常軌を逸した書痴っぷりが伝わってきて、非常に楽しい。 知の泥棒の歴史 『図書館巡礼』の著者は気づいていなさそうだが、本書は、知の泥棒の歴史に見える。 口伝、写本、書物、ROM、媒体は異なれども、人は知を集めようとしてきた。知は必ずしも正当な方法で集められるとは限らない。ひそかに盗み出されたり、言葉巧みに持ち出されそのまま帰ってこなかったり、ときに権力者によって強制的に収奪されることもある。 さらに、知の集積所である図書館には、知識だけでなく、知を司る人や、それを複製する人、売り買いする人たちが集まる。中には不心得者がいて、写本を失敬し、売りさばいたり自分のモノにする人もいる。 こうした知の泥棒たちは、自分の行為をやましいと思っていない。むしろ、その書物の本当の価値を知って