新型コロナウイルスに感染した人やその家族、医療従事者らへの差別や誹謗中傷を見て、「ハンセン病患者を官民が一体となって強制隔離した歴史の再現だ」と指摘する専門家がいる。「菌やウイルス=感染者という図式の下、患者自身も感染症と同様に『撲滅すべき敵』と見なされ、人権が無視される。同じ過ちを繰り返してはならない」と警鐘を鳴らす。(石原真樹) 「新型コロナ対策で、国は、住民の意識や価値基準に頼って外出自粛を要請するなどした。まさにハンセン病で行われた『無らい県運動』と同じ構図」。ハンセン病問題に詳しい内田博文九州大名誉教授はこう批判する。 官民一体でハンセン病患者を見つけ出し隔離した「無らい県運動」は1929(昭和4)年に愛知県で始まった。31年に患者の強制隔離を定めた「らい予防法」(旧法)が制定された前後から全国的に強化されていった。