路地から路地へ─。目の前を行くピンク色のコートを私は追いかける。慣れ親しんだ家の近所を散歩でもするかのように、彼女は飄々と夜の街を進む。 【写真】少女たちに無償で下着、避妊具、生理用品などを提供するバスカフェ 欲望の臭気に満ちた新宿・歌舞伎町の中で 2023年が始まったばかりのある日。時計の針は日付をまたごうとしていた。歌舞伎町(東京・新宿区)がもっとも歌舞伎町らしい表情を見せる時間。仁藤夢乃さんは欲望の臭気に満ちた街路の中にいた。 おぼつかない足取りの酔客をするりとかわし、近寄る客引きを無言ではねつける。 突然、仁藤さんが足を止めた。彼女の視線のその先に、キャリーバッグを手にした少女が立っていた。不安げな表情と、夜の冷気を避けるようにすぼめた肩が、“場慣れ”していない空気を全身から発散していた。 仁藤さんは、すっと少女に近づく。 「ごはん、食べてる?」 唐突な問いかけに、少女は戸惑いの表