元駐ウクライナ大使 角 茂樹 1.ロシアの侵略 2022年2月24日未明、ロシア軍は突如ウクライナに対して巡航ミサイルを発射し、国境を越えてウクライナ領内になだれ込んだ。これに対し、ウクライナ国民は一瞬怯えおののいたものの、愛国心とロシアに対する憎悪に燃え国を挙げて抗戦。簡単にウクライナ軍を壊滅できると踏んだプーチン大統領の予想に反し、ウクライナ軍はロシア軍に対して善戦し、戦局は長期戦の様相を呈してきている。 2.プーチン論文の欺瞞 これに先立つ2021年7月、プーチン大統領は「ロシアとウクライナの歴史的一体性」と題する論文を発表し、ロシアとウクライナは民族的にも歴史的にも宗教的にも言語的にも一つの人々であって、これを割こうとするのは、米国とEUそしてそれに乗せられた間違ったウクライナの指導者であると論じ、ウクライナの主権はロシアのパートナーシップの範囲内でのみ存続するという結論を導き出し