関東大震災の混乱の中で「朝鮮人や共産主義者が井戸に毒を入れた」などのデマが流され、罪のない多くの人が犠牲になった。旧日本軍・憲兵大尉の甘粕正彦らによって、無政府主義者の大杉栄(1885~1923年)や栄のおい(当時6歳)らが殺害された「甘粕事件」もその一つだ。栄のおい、大杉豊さん(84)=千葉県柏市=は「罪のない無関係の子どもまで殺された未曽有の事件。100年で終わりではなく、その記憶を忘れてはならない」と強く訴えている。 同事件は1923年9月16日、栄と内縁関係の伊藤野枝、栄のおいで当時6歳だった橘宗一(むねかず)の3人が憲兵に連行され、首を絞め殺されて遺体を井戸に捨てられた。軍法会議で、関わった5人のうち、主犯の甘粕に懲役10年、森慶次郎曹長に懲役3年の判決が出た。軍の組織的関与は不明だ。