目次へ 縦書き 寓話 猫の事務所 ……ある小さな官衙に関する幻想…… 軽便鉄道の停車場のちかくに、猫の第六事務所がありました。ここは主に、猫の歴史と地理をしらべるところでした。 書記はみな、短い黒の繻子の服を着て、それに大へんみんなに尊敬されましたから、何かの都合で書記をやめるものがあると、そこらの若い猫は、どれもどれも、みんなそのあとへ入りたがってばたばたしました。 けれども、この事務所の書記の数はいつもただ四人ときまっていましたから、その沢山の中で一番字がうまく詩の読めるものが、一人やっとえらばれるだけでした。 事務長は大きな黒猫で、少しもうろくしてはいましたが、眼などは中に銅線が幾重も張ってあるかのように、じつに立派にできていました。 さてその部下の 一番書記は白猫でした、 二番書記は虎猫でした、 三番書記は三毛猫でした、 四番書記は竈猫でした。 竈猫というのは、これは生れ付きではあ